ネット誹謗中傷「厳罰化」の一方で指摘される”危惧”と困難な”線引き”

 8月30日、法務省はSNSなどインターネットでの誹謗中傷を厳罰化し、懲役刑を導入する方針であることを明らかにしたが、これにネット上では《政治家の批判逃れに利用されないか》と懸念の声が広がっている。

「ネット上での誹謗中傷は侮辱罪が適用されますが、30日未満の勾留または1万円未満の科料となっていて、公訴時効も1年と短いのです。昨年5月に恋愛リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ系)に出演していた木村花さんが、多くの誹謗中傷を受けたことにより自ら命を絶ってしまいましたが、ネット上では投稿者特定に時間がかかるため多くの誹謗中傷をした人が時効となり、2名のみが立件できたものの、9000円の科料にとどまっているのが現状です」(社会部記者)

 そのためネット上の誹謗中傷に対する厳罰化を強く求める声が上がっていることや、東京五輪でも卓球の水谷隼選手や多くの出場者が誹謗中傷被害に遭っていたことが大きな問題となり、法務省は侮辱罪に「1年以下の懲役・禁錮」または「30万円以下の罰金」も加え、公訴時効も3年に延ばす方針を固めたという。

 しかし、これにネット上では《政治家や一部権力者の批判封じ、言論統制に使われなければいいが》《不祥事を起こした国会議員へ批判が起きたときも運用されそう》《刑罰が重くなれば、悪質な企業や政治家など資金のある人間が批判封じの脅しとして使うことも容易になるので注意が必要》など危惧する声も上がっている。

 誹謗中傷と政治批判は明らかに違うので問題ないと考えられるが、どのような誹謗中傷が侮辱罪にあたるのか、SNS利用者が意識を高めると同時に明確なライン引きも必要になってくるだろう。

(小林洋三)

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