第1次安倍政権時代、「不適格教員には厳しい対応を」として、07年に教育職員免許法が改正。09年度から導入されたのが、教員免許の更新制度だ。ところが23日、萩生田光一文部科学相がその制度を、早ければ2023年度から廃止する方針であることを明らかにした。
教育ジャーナリストが語る。
「更新制は、これまで無期限だった教員免許に10年の有効期限を設け、期限が切れる前の2年間で最新の知識や技能などを学ぶ講習を30時間以上受け、修了認定されなければ失効するというもの。講習には『必修領域』『選択必修領域』『選択領域』と3種類あり、前者2つは必ず受講しなければなりません。ただ、『必修領域』が受講できる場所は限られた大学や法人などで、都内では数十か所あるものの、地方では一桁というところも多いことから、導入当初から地域格差が問題視されていたんです」
たとえば北海道の場合、札幌以外の地域で受講できる大学・法人が極端に少ない。そのため、受講場所に行くまでに車で片道数時間、あるいはJRでも特急を使わなければならず、交通費だけで往復1万円というケースもあるのだとか。
「しかも、30時間の講習となると、単純計算して1日6時間受講して5日間は必要です。とうてい1万円の交通費を連日負担することはできませんから、宿泊となる。つまり、受講料だけでなく、交通費、宿泊費などの費用がすべて自腹になるということです。いかに免許更新が義務付けられているとはいえ、膨大な時間と費用を要するこの制度に対し、教職員から不満の声が上がったことは言うまでもありません」(前出のジャーナリスト)
しかもこの制度、更新の時期が近づいても本人への通知がないことから、うっかりしていて免許を失効してしまう、という教員も続出。
「よくあるのが、育児休暇中に更新時期を迎え、気がついたら失効してしまったというケースです。この場合、免許取得時の教職課程単位は無効にならないものの、再度、30時間以上の更新講習を受講・修了し免許状の授与を申請する必要があります。もちろん、その間は教壇に立つことが出来なくなります」(前出のジャーナリスト)
なるほど、知れば知るほど、この制度が教職員の間で圧倒的不評だった理由も頷けるが、とはいえ、廃止についてSNS上では、
《特に朗報でも何でもない。もともと不要な制度だったのだから。この不要な制度に翻弄された小中高教員が不憫なだけ》《免許更新制度には賛成だが、残念ながら制度を廃止しても、教員の待遇を抜本的に改善しない限り、志望者は増えないと思いますね》《恐らく、こう言った制度を廃止しなければならないほど、教員不足が加速しているのでしょう》といった冷めた意見も多く、さらには《国民のために働いてるのに現場を知らない国のリーダーにこっちは振り回されてる!軽々しく制度を作ったり廃止したり本当に迷惑だ!》《頭の良い人が作った制度かもしれないが、まずは教育現場に出て実態を知ってから、物を言ってもらいたい。家庭環境や生徒の精神面など、教科書通りに行かない現場を知らない限り、物を言うものではない!》といった厳しいコメントも。
政府や官僚は、こういった現場の声をどう聞くのだろうか。
(灯倫太郎)