「地球の歩き方」がコロナ禍に挑んだまさかの「生き残り策」とは

 創刊から実に41年、海外旅行ガイドブックのオーソリティとして、旅行ファンから親しまれてきた「地球の歩き方」。ところが昨年からのコロナ禍により、入国禁止措置をとる国が増え、部数が低迷。11月には版元のダイヤモンド・ビッグ社から学研グループへの事業譲渡が発表された。

 しかし、そんな「地球の歩き方」が、スタイルを変え続々と新刊を発行、SNSで大きな話題になっている。出版関係者が語る。

「ネットの普及で書籍離れが進む中、それでも『地球の歩き方』だけは、丹念な取材に裏打ちされた情報により、コロナ禍の前までは年間発行部数800万部を数年間キープするなど、海外旅行には欠かせないアイテムとして長年ファンから愛されてきました。とはいえ、さすがに海外旅行がダメになってしまうと、なすすべがなかった。しかも、ガイドブックは通常、発行から2〜3年ごとに改訂作業が欠かせませんからね。いまは現地取材もままならないので、たとえコロナが収まったとしても、すぐに改訂版を出すことはできない。編集部内に、そんなジレンマがあったことは想像に難くありません」

 そんな苦境の中、編集部が着目したのが、本来の旅行ガイドブックからの方向転換だった。

「東京五輪に照準を合わせ企画した『世界244の国と地域』が、20年7月に発売されたのですが、この本は通常のガイドブックと異なり、旅行ガイドではなく、各国の知識が学べる図鑑系の内容にシフトしたもの。これが予想以上に売れ行き好調だったのです」(出版関係者)

 今年3月には、シリーズ第2弾として「世界の指導者図鑑」「世界の魅力的な奇岩と巨石139選」「世界246の首都と主要都市」の3点が刊行されると、SNSでは大きな話題になり、《海外旅行といえば、『地球の歩き方』。旅行カバンと同じくらい必携だったけど、これを利用して図鑑にしたのは、すごい発想!》《旅行には行けない日々。図鑑を見て、海外に思いを馳せるのもいいなぁ。是非読んでみたい!》《コロナ禍を乗り切って 又私達のガイドになってもらいたいです》とエールの声が続出。

 そんな声に応え、7月26日には「世界のグルメ図鑑」、8月12日には「世界のすごい巨像」「世界のすごい城と宮殿333」の2点が発売され、売り上げも好調。さらに26日には「世界197カ国のふしぎな聖地&パワースポット」が発売される予定だ。

 まさに、編集力の勝利。それも膨大なデータを持っているからこそのなせる業だろう。ちなみに、「地球の歩き方」のほうは、海外旅行再開後、順次改定をすすめていくという。

(灯倫太郎)

ライフ