「食べるスープの専門店」として全国に50店舗以上を展開する「スープストックトーキョー」。無添加で本格派のスープが気軽に味わえるとあって、女性層を中心に支持を集めている。駅ナカやデパートなどの商業施設で、小腹を満たそうとフラリと立ち寄った経験のある方は多いのではないだろうか。
そんな人気チェーンがお台場のヴィーナスフォートに1号店を出して創業したのは1999年。昨今では冷凍スープのテイクアウト専門店やネット通販にも力を入れ、コロナ禍でも安定した売り上げをキープしているが、過去の「経営危機」とそれを乗り越えた裏話が、7月15日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)で紹介された。
窮地に立たされたのは創業から6年目の2004年。この年、東京・大手町では1923年の観測開始以来、最高となる39.5度を記録するなど、全国的な猛暑に見舞われた。すると、スープの味で勝負してきたスープストックトーキョーは赤字店が続出。ピンチを救ったのは、ある店舗の“英断”だったという。
「全店舗の売り上げデータをチェックしたところ、1店舗だけ売り上げを伸ばしている店舗があったそう。なんとその店は本部にナイショでカレーライスを提供していたというのです。カレーのスープそのものはメニューにあったものの、ライスにかけて提供していたのはその店舗だけ。無許可での販売にかかわらず、そこの店長は自作のポスターでカレーセットをPRしていたとか。この好調ぶりに目をつけて、社内会議でカレーライスをメニューに加えるかを検討し、社長の『現場の声に従おう。カレーライスで勝負しよう』の一声で新メニューに加わったとのこと。結果、それまで“裏メニュー”だったカレーライスで他の店舗も売り上げを伸ばし、猛暑の危機を乗り越えたのです」(経済誌ライター)
同番組のスタジオにリモート出演したスープストックトーキョーの遠山正道社長は「現場が上からのやらされ仕事ではなく、みずから発意して危機を乗り越えていくようなこと」と当時を振り返った。その考えは現在にも活かされているようで、スタッフの発案などにより、高級のり弁の専門店や親子の食事に特化したファミリーレストランなど、さまざまな新業態の店舗を出店している。アイデアや企画次第では、1従業員が「社長」という形で新店舗を運営できるというわけだ。
「現場の声を大切にしているという点では、『餃子の王将』も各店舗でオリジナルメニューが提供されています。味付けやメニュー開発については、各店舗に決定権がゆだねられていると聞いているので、スタッフも前向きに仕事に取り組めるのではないでしょうか」(前出・経済誌ライター)
今年も連日の猛暑が続くが、機会があれば、スープ専門店のこだわりのカレーライスを味わってほしい。