「金正恩の後継者」問題、最有力の金与正を脅かす”あの人物”とは

 このところの激やせ報道で、改めて健康不安説が囁かれる北朝鮮の金正恩総書記。そんな金氏に「万一」のことが起こった場合に備え、韓国情報筋では後継者問題をめぐる日々の情報収集に余念がないと言われる。北朝鮮情勢に詳しいジャーナリストが語る。

「正恩氏には、妻の李雪主との間に3人の子供がいるとされますが、まだ小さいことに加え、その中に、男の子が含まれているかどうかがよくわからない。そのため、かねてから伝えられていたのが、妹の金与正をワンポイント・リリーフとして後継者に据えるという案だった。しかし、北朝鮮は未だ男尊女卑の考え方が根強く残っている国。しかも、与正氏のプッツンにより起こった南北連絡所爆破事件の余波などもあり、軍の上層部からは『つなぎ』としても疑問視する声が多いと伝えられます。恐らくは、そうスンナリといはいかないでしょう」

 韓国情報筋の間では、後継者としてさまざまな名前が浮上しているというが、その一人が、長い間その消息が伝えられなかった正恩氏の実兄・正哲氏だという。

 前出のジャーナリストが語る。

「正恩氏の父・故金正日氏には、2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺された異母兄の金正男氏を含め4人の子供がいますが、実はこの正哲氏こそが、弟・正恩氏が2010年9月の党代表者会でお披露目されるまで『金正日氏後継者の本命』とみられていたんです。というのも、北朝鮮では家督を継ぐのは兄の役目とされ、通常、弟が兄を差し置いて、などということは考えられないからです。しかし、故・金正日氏が後継者として選んだのは正恩氏だった。理由はハッキリしていませんが、ただひとつ言われていることは、正哲氏には政治的野心がなく、音楽好きな自由人だったと……。結果、弟が後継者としてデビューした後に党幹部に選ばれることもなく、それどころか、2011年12月に亡くなった父正日氏の告別式や国葬の場にも、その姿は確認されていないと言われますからね。しかし、北朝鮮軍部には『与正氏はだけは後継者の椅子に座らせるわけにはいかない』という勢力があるのは事実。そういった幹部が長男の正哲を担ぎ上げる可能性がないとは言えません」

 正哲氏の国内での動静は全く不明だが、海外での目撃談は多く、2015年5月20日にも、英国で行われたエリック・クラプトンの公演会場にジャンバーにサングラススタイルで現れた姿がテレビ局によってキャッチされている。

「この時は女性と3人の付き添いが同行しており、一泊40万円というテムズ川沿いの5つ星ホテルに投宿。公演鑑賞後、22日にロンドンをたち、モスクワ、北京経由で帰国する予定だったといいますが、メディアにキャッチされたことでモスクワ便に搭乗せず、その後の行動は謎のまま。もともと正恩との兄弟仲は良く、関係も友好的だったとされますが、取り巻きの中には権力を握らんがために正哲氏を担ごうとする野心家らが出て来ないとも限らない。もし後継者問題が生じれば、一筋縄ではいかないでしょうね」(前出のジャーナリスト)

 今後も、後継者問題をめぐり、北朝鮮情勢から目が離せない。

(灯倫太郎)

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