140㎏から大幅ダウン!?金正恩総書記「おやつれ」公式報道の裏にある思惑とは

「敬愛する総書記様のおやつれになった姿を見ると、我々人民たちは一番心が痛いです」

 北朝鮮の公式メディア「朝鮮中央テレビ」が25日、最近の金正恩総書記について街頭インタビューした中年男性の、こんなコメント映像が全世界に配信され、波紋を広げている。

 北朝鮮事情に詳しいジャーナリストが語る。

「これは、金総書記が観覧した国務委員会演奏団(6月20日)の公演を、22日、朝鮮中央テレビが2時間の特集番組として放映、25日に『公演を見た市民らの反響』として市民にインタビューした映像です。番組では20人にインタビューしていますが、大半が金総書記や党への礼賛、あるいは公演の感動を述べたのに対し、この男性だけが『おやつれになった』とハッキリと金総書記の体調を気遣う発言をしているんです。周知のように、北朝鮮では金総書記の健康状態はトップシークレット。噂を口にしただけでも治安当局から逮捕されるため、一般市民が軽々に口にするなどあり得ない。ましてや、北朝鮮での報道は政府の検閲により、承認されたものしか放映されませんからね。つまり、この映像には明らかになにか裏があるということです」

 5月からほぼ1カ月間、公的な場に現れなかった金総書記が朝鮮労働党政治局会議出席のため、約1カ月ぶりに姿を見せたのは、6月4日のこと。ところが、その際に顔が一回り小さく、腕時計ベルトの締め具合から細くなった手首が確認されたことで、再び健康不安説が浮上。仮に健康不安説を払拭することが目的なら、あえて市民に「おやつれになった」などとコメントさせるはずもないはずだが……。

 前出のジャーナリストが続ける。

「映像を見る限り痩せたことは間違いありませんが、今の状況では健康管理のためのダイエットなのか、それとも健康状態に異常があるのかは正直、わかりません。ただ、自分の痩せた映像を繰り返し流し、市民に『心が痛い』と言わせている背景には、『私は人民のためにこれだけ苦労している。その証拠にこんなにもやつれてしまったんだ』という思惑が見え隠れします。というのも、北朝鮮は今、経済制裁や食糧危機に加え、新型コロナウイルス対策による中国との境界の封鎖という文字通り三重苦にあえいでいる状況です。特に食糧危機については20年の台風被害の影響から、90年代の大飢饉になぞらえて『苦難の行軍』という言葉を用いるほど深刻な状況。にもかかわらず、相変わらず抜本的な対策が見いだせないため、人民の溜まりに溜まったフラストレーションは爆発寸前だと言われています。つまり、このタイミングで、自身がやつれた姿を見せ、市民に『心が痛い』と言わせることは、私も我慢しているのだから、皆さんも我慢してほしいと、自分に向かう怒りの矛先をかわしている可能性もあるということ。要は健康のためのダイエットを上手くプロパガンダに利用しているとも考えられます」

 それが事実だとしたら空いた口が塞がらないが、最高指導者の地位に就いた10年前、金総書記の体重は90㎏程度と推定されていた。しかし、年を追うごとに、それが巨大化。最近では140㎏に達し、糖尿病や高血圧など成人病の疾患を抱えているとの報道もある。

 だとすると、単に健康を気にしてのダイエットとの見方もできるのだが……。はたして「おやつれ」の真実はいかに。

(灯倫太郎)

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