自治体が発行で急拡大 「ふるさと納税」の次は「環境債」ブームに

 総務省のデータによると、ほんの10年ほど前は受入額がわずか100億円レベルでしかなかったふるさと納税も、2018年には5000億円を突破。自治体によって個性が異なった返礼品を待つことは、一般的で身近な楽しみとなっている。

 そんなふるさと納税は地方公共団体の財政を大きく手助けするものだが、次は地方債がブームになるかもしれない。再生可能性社会を可能にするための、地方公共団体によるESG債を発行する団体がこのところ急速に増えているからだ。

「ESGとは、英語の環境・社会・統治の頭文字から取ったもので、この3者に関する施策を行うために債券を発行、購入してもらって、集めた資金をそのための事業に充てるというものです。その際、環境を守るための事業を行うために発行されるグリーンボンドと、社会環境のためのソーシャルボンド、双方に役立てるためのサスティナビリティボンドに大別され、多くの企業で既に発行されています」(経済ジャーナリスト)

 実際にESG債を昨年度発行した自治体が東京都、長野県、神奈川県だ。中でも、長野県が発行したのは対CO2排出や自然災害対策などに使われるグリーンボンド。具体的には、小水力発電所の設置、県有施設での照明のLED化、森林保全のための林道整備などが掲げられている。年限は10年の満期一括償還で、年利0.140%。発行額は50億円に設定されている。

「東京都では20年度にグリーンボンドを300億円発行しましたが、21年度はさらに100億円上乗せて400億円を発行する予定となっています。なぜなら、ESG周辺には投資家も大きな関心を示していて、機関投資家の間で人気が高かったから。上乗された100億円は機関投資家向けとなります」(前出・ジャーナリスト)

 そして今年は川崎市や三重県が起債する予定なのだが、三重県のグリーンボンドの使い道を見ると地方色が伺えて面白いものとなっている。三重県と言えば16年にサミットが開催された伊勢志摩の環境とそこで行われているアコヤガイの真珠養殖が有名だが、起債の目的には環境保全に資するものが様々含まれる中、このアコヤガイの養殖環境の整備も含まれている。

 地方創生とサスティナビリティ社会の実現に役立ち、かつ、安全な分散投資につながって一挙3得というのだから、やはり今後、ESG債を発行する自治体は増えそうだ。

(猫間滋)

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