打球速度は岡本に次ぐ166キロ!大型新人・秋広優人が覆した高校時代の低評価

 3月に入りオープン戦もスタートしたプロ野球。そんな球春を盛り上げているのが規格外ルーキーだ。大学生ナンバーワンスラッガー、佐藤輝明(21)が度胸満点のフルスイングを披露すれば、球界最大の“巨人”が大器の片鱗をチラつかせる。まさに伝統の一戦さながらに熱気を帯びる新戦力を緊急レポートする。

 虎の宿敵・巨人にも、文字通りの“超大型巨人”が加入した。1955年のジャイアント馬場(登録名・馬場正平)以来となる身長2メートル選手として注目を集めているのが、ドラフト5位で入団した秋広優人(18)だ。

「高校まで投手と一塁手の二刀流をこなす選手でしたが、プロ入り後は大型三塁手として育成するプランが練られていました。当然、今年のキャンプでは、2軍や3軍で体作りと守備の型をじっくり叩き込む予定でした。しかし、試しで紅白戦に出してみたら快音を連発。急転直下で育成プランを再考することになったそうです。高卒の新人としては、異例の特別待遇といえるでしょう」(在京球団スコアラー)

 2軍の紅白戦2試合で7打数5安打の固め打ち。堀岡隼人(22)や戸根千明(28)のような1軍当落ラインの投手からも安打を重ねたことで「十分、1軍に値する選手」と、原辰徳監督(62)のお墨付きを得て、2月12日に1軍キャンプに合流した。

「昨秋のドラフトで『育成元年』を宣言したチームのPR要素を多分に含んでいるとしても、高卒1年目で木製バットに適応する力は本物です。鳴り物入りで中日に入団した根尾昂(20)でさえ、適応するのに2年を要しました。打球速度は主砲の岡本和真(24)の170キロに次ぐ166キロをマーク。コーチ陣が『イジるところがない』と口をそろえるほど、豪快な打撃フォームに感心していましたよ」(球界関係者)

 身長191センチの大型打者として活躍した駒田徳広氏も賛辞を送る。

「柔らかい打撃フォームで振れているので、長身のパワーを余すことなくボールに伝えられているのがいいですね。というのも、長身の選手は決まって窮屈な打ち方になりがちなんです。例えば身長170センチと190センチでは20センチの差がありますが、ストライクゾーンが20センチ広くなるわけじゃない。実際は5センチぐらいしか違わないんです。なのでストライクゾーンが相対的に狭まり、その狭いスペースでバットを振ると、打撃フォームがガチガチに固まってしまいがちなんですよ」

 1軍に合流した翌日、原監督からファーストミットを直々に渡され、高校時代に守っていた一塁を兼任することが決定。コロナ禍の影響で来日が遅れている新外国人ジャスティン・スモーク(34)の穴埋めとして指名されたのだ。

「ただ、シーズンが始まればベテランの中島宏之(38)がスモークの代役を担う公算が大きいでしょう。2000安打達成まで残り150本に迫り、本人も燃えていますからね」(在京球団スコアラー)

 とはいえ、2月23日のヤクルト戦で2本の二塁打を放ち、高卒の新人では1959年の王貞治(80)以来、巨人史上2人目となる開幕スタメンも見えてきた。

「原監督は、当時まだ2年目だった坂本勇人(32)を独断専行で開幕スタメンに起用した過去があるように、新戦力好きでもある。秋広をいきなり抜擢しても不思議はないですね」(在京球団スコアラー)

 はたして原監督のサプライズ采配はあるか。

 もはや球界全体が秋広のポテンシャルに釘付けの様相だが、ドラフト5位の順位が示すように、高校時代の評価は、さほど高くはなかった。

「高校通算23本塁打の長打力とMAX144キロのストレートが武器でしたが、ほとんどの球団が『大器晩成型の長身投手』として評価していました。野手として指名した巨人さえも、3年生の東東京大会には、投手巡回コーチを兼任していた水野雄仁スカウトを視察に派遣したほど。同じく身長2メートルの高卒左腕・阿部剣友(18)は育成ドラフト8位の評価ですから、秋広の投手としての評価も、その程度だったのでしょう」(在京球団スコアラー)

 そんな低評価を覆して1軍昇格を果たした秋広だが、巨人の一塁手といえば助っ人外国人たちの巣窟と言っても過言ではない。将来的に出場機会を得るためには、不安もチラつくのだが‥‥。

「確かに巨人は毎年のように打てる外国人を補強するチームです。ただ、他の内野手とコミュニケーションが取れる日本人に一塁を守らせるのは、非常に有効なんですよ。外国人の場合、細かい動きやサインを覚えられないケースがままありますからね。特に投手と野手が連携するサインプレーは、一人でも理解できない選手がいると成立しませんから。秋広選手の身長にパワーがつけば、外国人選手にも見劣りしません。ぜひ、一塁手のスペシャリストを目指してもらいたいですね」(駒田氏)

 2月25日の中日との練習試合では、一塁線の打球を後逸。プロ初失策を記録した試合後には、クールダウンする中日ナインの視線を浴びながら居残りノックに励んでいた。

「今は後藤孝志野手チーフコーチ(51)が秋広に付き添って課題を一つ一つクリアしている段階です。試合中に牽制のミスが生じた時には、原監督を交えた『補習授業』が行われたこともありました。新しい環境に飛び込んだばかりなのに疲れた顔一つ見せないし、他の1軍選手のカンフル剤としても機能しています」(球界関係者)

 天井知らずの未完の大器は、どのような成長曲線を描くのか。3月26日の開幕が待ち遠しい。

■「秋広優人」プロフィール

生年月日:2002年9月17日(18歳) 身長200センチ・体重95キロ 

出身地:千葉県船橋市 経歴:二松学舎大学付属高等学校 

通算本塁打:高校23本 

プロ入り:2020年ドラフト5位 

契約金/年俸:3500万円/540万円

※「週刊アサヒ芸能」3月11日号より

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