昨春の緊急事態宣言発出以降、閉店や休業、解雇などの憂き目にあい思うように収入を得られなくなった女性たちが、リラクゼーションを目的とした非ピンク店である「メンズエステ」に流入してきているという。ここ数年、都市圏を中心に店舗数・顧客が増加傾向にある「メンズエステ」とはいえ、傍から見れば第二波、第三波のコロナ禍で思うように稼げているとは思えないが、そんな中でも一定の収入を得ているという“勝ち組セラピスト”に話を聞いた。都内の某店で働く29歳のA子さんは語る。
「前職は女性向けのリラクゼーションサロンで働いていたのですが、コロナ禍で客足が鈍ったのを機にメンズエステの方へ転職しました。ほかのセラピストさんがTwitterやブログをやっているのを見て、転職と同時に自分から情報発信していったのがよかったのか、現在でも週4日の出勤で30万円以上は稼げています。もちろん困ったお客さんもいますが、程度の差はあれ、どんな仕事でも嫌なことはあるものと割り切っていますね。少額ですが貯金もできているので、今の状況には満足です」
その一方で“ピンク業界”からの転身組もいる。32歳のB子さんは、かつては性的なワザを駆使して男性客を虜にしてきたというが…。
「前回の緊急事態宣言で吉原の店舗が一斉に休業した際にメンズエステへ移ってきました。私の場合マッサージはそこそこ、ドキドキ感を演出するキャラクターに振り切って働いています。この業界ではシャワーへご案内する際に手を引いてあげる、密着度の高いマッサージをするという、前職で行っていたことをするだけで十分差別化でき、体力的にも負担が減りました。もちろん収入は下がりましたが、このご時世では多くを求めてはいけないな…と思っています」
話を伺ったセラピストは、いずれも前職のスキルを生かして安定した収入を得ているようだ。これを受けて、メンズエステ業界を取材しているライターは語る。
「メンズエステの店舗では教育体制が整っていないことがほとんど。稼いでいるセラピストは独自の人脈を活かしたり、自分からマッサージ技術を学んだり、積極的に情報発信したりと“個の力”で客の心をつかんでいます。業界全体の傾向としても、客は店ではなく女性についている。時流に乗り、顔出しでYoutuberとして活躍するセラピストもおり、そういった女性は月収50万円以上をコンスタントに稼ぎ出しています。裏を返せば自発的な取り組みが実ってはじめて稼げるという状況なので、いくら盛況とはいえ、ルックスで稼げるほど甘くない世界と言えるでしょうね」
それまで就いていた職に早い段階で見切りをつけて、新たな業態で稼ぐセラピストの姿にはたくましさすら感じる。「後手後手」と非難される日本政府も、彼女たちの決断の早さや対応力、フットワークの軽さを少しは見習うべきかもしれない。
(穂波章)
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