最も古い職業のひとつとして紀元前の時代から存在するピンク産業の艶婦。古代ローマ時代には国の正式な認可のもと、各都市に娼館があったと伝えられている。
しかも、現在のようにこそこそ遊びに行く後ろめたい場所ではなく、社交場のような役割を果たしていた。つまり、当時はオトナの男性にとっての嗜みのひとつでもあったわけだ。
ちなみにトルコ西部のクシャダス郊外にある「エフェス遺跡」は、世界遺産にも登録されている古代ローマ時代の都市遺跡。最盛期には20万人以上が住んでおり、現在に例えるなら数百万人規模に匹敵する大都市だった。
そんなエフェスの街にも当然ピンク店が存在。遺跡内の一角にしっかりと残っており、現在残っているものでは世界最古のピンク店の遺跡と言われている。しかも、そこはエフェスのメインストリートだったとされるクレテス通りに面した一等地。東京に置き換えるなら銀座のど真ん中でピンク店が営業しているようなもので、いかにすごい場所に店舗があったか理解できるはずだ。
ちなみに通りはローマ時代の他の都市と同じように板状に加工された石が敷き詰められているのだが、店の入口に面した部分の石板だけ、足形が彫られている。実は、ピンク店の看板だったと言われているが、これにはもうひとつ重要な意味があった。
なんとこの足のサイズよりも小さな男性は入場不可で、要は子供とみなされてしまったのだ。ちなみに古代ローマ人の身長は今とは別人のように小柄で、成人男性でも155〜165センチほどしかなかったという。
石板の足形もかなり小さいとはいえ、身長だけでなく足の大きさにも個人差はあるもの。サイズが足りないばかりに遊ぶことができず、涙をのんだ男性もいたに違いない。
遊園地の乗り物などにも「○センチ以下の方は乗れません」といった身長規定はあるが、あれは乗り物や安全ベルトの寸法などに基づいた、いわば理に適ったもの。それを考えると、エフェスのピンク店遺跡はちょっと理不尽な気もする。
足のサイズに関係なくピンク店で遊ぶことができる現代人で本当によかった。
(トシタカマサ)