「一撃で100万円」SNSの“闇バイト”でピンク嬢がタタキの標的にされる理由

 最近、SNS上でやたら目に付くようになった《お金に困っている人必見!日給10〜30万!完全日払い・全国で勤務可能》《高収入・裏仕事・資金調達》といった怪しい投稿。これらは、すべて特殊詐欺や強盗などの犯罪行為を持ちかける「闇バイト」と見られている。

「SNSで募集をかけるメリットは、仕事を発注する仲介者と実行犯が最後まで顔を合わせずに金の受け渡しができることです。そのため、実行犯が捕まっても、黒幕にまでなかなか捜査の手が及びづらい。彼らは隠語で募集を行う場合が多く、『S』は詐欺。『UD』は特殊詐欺の受け子と出し子。そして『T』がタタキと言われる強盗なんですが、最近は、大きな金額を示す『一撃』というフレーズがよく用いられています」(全国紙社会部記者)

 たしかにツイッター上で検索をかけると《一撃100万円も可》《本日、東京で50万円の一撃案件あります》といったワードが並んでいた。

 そんな、「一撃バイト」で集められたメンバーによる犯行と見られているのが、 10月26日に起きた、人気艶女優を狙った強盗事件だ。

「事件の舞台となったのは人気艶女優が住む東京・中目黒駅前の高級タワーマンション。宅配業者を装った2人組の男が訪れ、現金約600万円が奪われたというものですが、疑問なのは、いくら高級住宅街にあるタワマンとはいえ、なぜ被害者宅に600万円もの大金が保管されていたことを男たちは知っていたのかという点。この犯行は事前に誰かが入念に情報収集し、行動確認したあと、犯行に及んだ可能性が高いということです」(前出・社会部記者)

 逮捕されたのは17~19歳の少年3人。神奈川県内で確保された彼らの車から現金400万円が見つかったが、残る200万円は不明。被害者の女優と少年3人に面識はなかったという。

「実は被害者女性は2014年6月に東京国税局から2億4500万円の所得隠しを指摘され、1億7000万円の追徴金を課されているんですね。調査の過程で、彼女の家に1億円もの“タンス預金”があったことなどが一部報道で明らかになっており、犯行グループは今も莫大な額の現金を貯め込んでいると考えたのかもしれません。それにしても、どうやって住所を突き止めたのかなど、多くの謎をはらんでいます」(前出・社会部記者)

 被害者女性はアイドルグループにも在籍し、幅広く活動していたことから、高収入は推して知るべしだが、追徴金1億7000万円とは驚くばかりだ。

「実は稼ぎの良いピンク業界の女性を狙った同様の事件は少なくないんです」というのは性産業の裏側に詳しいジャーナリストだ。

「ピンク嬢のなかには給与は現金支給で、確定申告すらしていない女性は意外と多い。銀行に預けるという習慣がなく、交際していた男に情報を売られて、自宅に保管していたウン千万円もの現金を奪われたケースもあります。よく耳にするのが、売れっ子クラブ嬢が、給料日に現金を根こそぎ盗まれるというケース。で、調べてみたら、交際中のホストが裏で手を引いていたというケースも…。他の業界に比べ、狙われるリスクは高いかもしれませんね」

 情報を売られて強盗の標的になるばかりではない。コロナ禍で仕事が激減したピンク嬢がみずから「闇バイト」に募集するケースもあるという。

「さすがにタタキの実行犯というわけにはいかないでしょうが、摘発のリスクが高い特殊詐欺の出し子と受け子は慢性的な人材不足ですし、『一撃』のターゲットとなる女性たちの個人情報を入手し、それを流して金を得る『情報屋』で副収入を得ている女性もいる、と聞いています。コロナで仕事がないとはいえ、身内の情報を売ってわずかな金を得るなんて、本当に嫌な世の中になったものです」(前出・ジャーナリスト)

 警察庁の統計によると、今年1〜9月に強盗事件で摘発した1173人のうち、20代以下は610人。19歳以下は前年同期比で約4割増の242人に及んだという。その背景にあるのが、若者が安易に手を染める「闇バイト」「裏バイト」だとしている。

 誰もが加害者にも被害者にもなりうる時代。「一撃」で大金が転がり込む仕事など犯罪以外の何物でもないことを覚えておくべきだ。

(灯倫太郎)

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