本殿は断崖絶壁の岩窟に…「日本一危険な神社」の“参道”に潜む死のリスク

 以前からネット上では“日本一危険な神社”として知られている、北海道久遠郡せたな町にある「太田山神社」。道南の渡島半島の日本海に面した断崖絶壁にあり、体力に自信のある者でないと到達は困難とされている。

 しかも、地形的に落石が多く、参道や山道も傾斜があまりにキツく滑落の危険もあり、一帯はヒグマの生息地で目撃情報も絶えない。こんな過酷な環境で、かつ僻地ゆえに訪れる者は少なく、地元では「いつ死亡事故が起きても不思議ではない」と言われているほどだ。

 最近はユーチューバーによる突撃動画の公開のほか、テレビでも紹介されたりしているが、筆者もこの日本一危険な神社に参拝したことがある。

 この太田山神社は猿田彦大神を祀る神社として室町時代の嘉吉年間(1441〜1443年)に創建されたと伝えられており、北海道の神社としてその歴史は古い。だが、北海道道740号線に面した鳥居から真っすぐ伸びている139段の石段の平均斜度はなんと45度。階段というよりは壁に近く、振りむいて下を見ると足がすくんでしまうほど。参拝経験者によれば「こんなのまだ序の口」だそうだが、この時点で断念して引き返したいと思わせるほどだ。

 石段の先は山道と言えば聞こえはいいが、ほぼ未整備の獣道が続く。ヒグマの脅威に加えて、夏場にはスズメバチやブヨ、蚊なども多く発生し、熊よけや虫よけグッズは必須。すでに汗は全身ダラダラで、虫の羽音は絶えず聞こえてくるし、虫が苦手な筆者のメンタルは削られ、もはや心が折れる寸前だった。

 また、かなり上まで登り、視界が開けたと思ったら崖上から垂らされている鎖を登らなければ先に進めず、もはや参拝なんて生易しいレベルではない。大田山の崖の岩窟に安置されている本殿(写真)にたどり着いた時の達成感は、ほかの神社やお寺では味わえないものだったが、下山の際に同じ苦しみを再び味わったのは言うまでもない。

 話のネタには間違いなくなるので体力に自信があれば構わないと思うが、一歩間違えば死の危険があるのは事実。日本一危険という評判に偽りはなかったようだ。

(高島昌俊)

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