世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「オリックスよ、混パを演出せい!」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 パ・リーグの優勝争い、CS圏の2位争いが佳境に入った。ロッテは大量のコロナ感染者が出るアクシデントがあったけど、最後までソフトバンクに食らいついてほしい。その上位チームのラストスパートの戦いでカギを握るのが、対オリックス戦。首位打者で吉田正、防御率で山本とタイトル争いをリードする投打の柱を擁して、最下位にいるのがおかしいチームや。9月は17年ぶりの5カード連続勝ち越しをするなど、月間勝ち越しをマークし、中嶋監督代行のもとでチームが活気づいている。

 10月1日のオリックスと西武の一戦(京セラD)は「誇り高き闘将~西本幸雄メモリアルゲーム~」として行われた。1967年10月1日に阪急を初優勝に導いた西本さんの生誕100周年を記念してのもの。僕も同期入団の山田久志、加藤秀司と一緒に試合前のイベントに招かれ、入団当時の懐かしいブレーブスのユニホームに袖を通した。監督がつけていた背番号50を選手全員が着用。選手たちは球団が引き継ぐべき伝統を学ぶいい機会になったと思う。

 今年で12球団最長の24年連続V逸のチームには、今こそ西本魂が必要。負けても「しかたないな」ではなく、「あんなに練習したのに、まだ練習が足らんのか」と悔しがらなアカン。メモリアルゲームも1点差の逆転負け。ベンチにじっちゃんがいたら、どなり散らしていたと思う。ここ一番のチャンス、ピンチでの勝負弱さは集中力がないからで、その集中力も技術があってこそ。メンタルも大事やけど、それ以前の技術をまず磨くこと。それには理にかなった練習を続けるしかない。

 松下電器の後輩の加藤秀司がドラフト2位で、僕は7位でのおまけ入団。掃いて捨てるほどの実力しかなかったルーキーが、名球会に入り、盗塁の記録を作れたのは西本さんの指導のおかげ。背の小さい僕に対しても、しっかり体の回転でバットを振る西本型の打撃を教えてくれた。1年目のオフに言われたとおりの形で黙々と素振りを続けたら、見違えるような打球を打てるようになった。

 今のオリックスにも磨けば光る素材がたくさんいる。中でも中嶋監督代行との話で名前が出たのが、育成出身ルーキーの大下誠一郎。9月14日に支配下登録され、三塁でのスタメン起用が続いている。ずんぐりむっくりした体形も昭和の匂いがするけど、今時珍しいハングリー精神むき出しの選手。試合中も大声を出していて、おとなしい選手の多いオリックスにはいなかったタイプや。早くも個人グッズが販売され、ファンを引きつける魅力がある。とはいえプロは甘くない。今、与えられている出場機会で自分に足りないモノを自覚し、来年は一皮むけた姿を見せる必要がある。

 残念だったのが、一昨年のドラフト1位で高卒2年目の太田椋。今年はプロ初本塁打も記録し、これからという時にまた故障。9月25日の日本ハム戦で、二塁走者として三塁に向かった際に、ゴロを処理しようとしていたビヤヌエバに激突、右肋骨骨折で登録を抹消された。イノシシやないんやから、目の前に人がおったらよけないと。昨年も千賀の内角ボールを打ちにいって止まらず、死球で右腕を骨折して長期離脱している。素材はいいのに、もったいない。来年こそはケガと友達にならず、レギュラーをつかんでほしい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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