牛丼チェーン「吉野家」を運営する吉野家ホールディングス(HD)が10月9日に発表した2020年3月〜8月の中間決算で、純損益が約57億円の赤字だったことが判明した。同HDは今年7月に最大150店舗の閉店を検討していることを公表していたが、さらなる苦境に立たされていることが明らかとなった。
「新型コロナウイルス感染拡大に伴う不採算、または売上高の回復が見込めない店舗の閉店などで総額約21億円の特別損失を計上したことが、大幅な赤字に繋がったと見られています。なお、吉野家HDが00年に東証1部へ上場して以来、中間決算としては、今回の赤字額が最大となります」(経済部記者)
吉野家の今年9月の既存店売上高は90.8%と前年同期を10%近く下回っており、今年3月から一度も前年同期比でプラスになっておらず、客数も落ち込んだままだ。他の牛丼チェーンも厳しい状況が続いているが、《吉野家は原点回帰して牛丼だけにメニュー絞った方が良い》という声がネット上で多く上がっている。
「吉野家は03年まで基本的にメニューは牛丼のみでしたが、同年にBSE問題で米国産牛肉の輸入が禁止となると豚丼やカレーなどの代替商品が登場し、以降、様々なメニューが投入されるようになり、今では鰻重やからあげ、ミックスフライなどを販売する店舗もあり、グランドメニューだけで50種類を有に超えているのです(※店舗により異なる)。最近ではライザップ牛丼や牛すき鍋膳がヒットして売上アップに貢献しましたが、メニューが多すぎるというマイナスのイメージは否めず、『すき家』や『松屋』との差別化が出来ていませんよね。メニューを牛丼のみに絞れば牛丼の吉野家を強く印象づけることが出来るだけでなく、回転率も向上しますし、セルフオーダー方式を進めていくなかで、経費も人件費も削ることが出来るのです」(経済ジャーナリスト)
吉野家は店舗だけでなく、メニューも削るべきなのかもしれない。原点回帰が再浮上の鍵となりそうだ。
(小林洋三)