CS進出へ崖っぷち!楽天が水面下で進める田中将大「150億円奪還計画」の全貌

 10月1日早朝、楽天の幹部たちはCS進出へ生き残りをかけるソフトバンク戦以上に、ヤンキース対インディアンスのワイルドカードシリーズ第2戦の結果を気にかけていたという。理由は田中将大の先発にあった。なんと、かつてのエースを奪還する壮大なプロジェクトがひそかに進行していたのだから‥‥。

 田中将大(31)が登板したその試合の結果は、風雨が吹き荒れる最悪のコンディションにもさいなまれ、5回途中で6失点降板。チームは大乱打戦を制し、2連勝で地区シリーズ進出を決めたものの、田中は自身が得意とするポストシーズン登板初戦で本領を発揮できなかった。楽天の球団関係者が打ち明ける。

「ある球団幹部が真剣な表情で『ナイスピッチングとならなかったのは確かに残念だけど、あえてプラスに言うならば、これでもしかしたら田中が、こっちに戻ってくる流れになるかもしれないぞ』とつぶやいたんです。それを聞いて『ああ、なるほど』と思うようになりましたね」

 この幹部が口にした「こっち」とは、もちろん「楽天」を指している。つまり、田中が古巣復帰を果たすシナリオを、複数の幹部主導で極秘裏に進行させているというのだ。

 球団の運営母体である親会社・楽天本社の内情に精通している球界関係者のA氏は、声を潜めて次のように説明する。

「今オフ、ヤンキースとマー君の7年契約が切れます。楽天が狙っているのは、広島に黒田がメジャーから復帰して(2シーズン目の16年に)優勝まで持っていったムーブメントの再現です。しかも(復帰1年目は40歳と)晩年だった黒田と違うのは、マー君はまだ31歳の全盛期ということです。当然ながらヤンキースは残留交渉をするでしょうし、メジャー他球団との争奪戦にもなる。そこに日本の球団が参戦すれば現地でもニュースになりますし、それだけでも楽天にとっては宣伝になります。黒田はパドレスから打診されていた約20億円の契約を蹴って年俸4億円で広島に復帰しましたが、楽天はメジャーと真っ向勝負での獲得を目指しているんです」

 とはいえ、田中の獲得に本気で動くとなれば、凄絶なマネーゲームとなることは必至だ。

 今季終了後に契約が切れ、FAとなる田中について、ヤンキースのキャッシュマンGMは早い段階から「すばらしい才能を持っている。我々も含め、どのチームも欲しがる選手」と言い切っている。米主要メディアはこぞって田中の「来季以降もヤンキース残留」を早々と予想しており、米スポーツ専門局「ESPN」も「年齢と右肘内側側副靱帯の部分断裂により、球団は大型契約に慎重になるかもしれない」としながら、「ヤンキースは明らかに田中の扱い方を心得ており、率直に言ってローテーションは彼を失うわけにはいかない」と断じているほどだ。

 いくらコロナ禍により収入面で大打撃を受けているとはいえ、メジャーの中でも無尽蔵の資金力を誇る金満帝国・ヤンキースに日本の球団が太刀打ちできるか。はなはだ疑問が残るところだ。

 しかも、親会社の楽天は今年5月に発表された20年12月期第1四半期決算で最終損益が353億円の赤字(前年同期は1049億円の黒字)となっている。田中復帰をもくろむ球団にとっては「逆風」と思われがちだが、そうではないという。

 球団関係者が解説する。

「『楽天モバイル』のモバイル事業など、主に新規事業への先行投資が赤字の大きな要因で、これは本社としても想定内の数字です。逆に営業収益だけを見れば、前年同期比18.2%増の3314億円の増収を達成しており、金融事業の規模が大きい本社は営業キャッシュフローの大幅プラス、という経営状況から判断すると、本業でしっかり稼げていると言えます。資金力は潤沢なんです」

 それを踏まえたうえでA氏は、今オフに楽天が展開する、日本球界で類を見ない「札束攻勢」の具体的な数字に切り込んだ。

「現在のマー君は7年1億5500万ドルの契約でしたから、年俸にして約24億円の計算です。30代に入った今後の伸びしろを考えて、年俸ベースを下げるか、アップで契約年数を減らすかだと思いますが、基準は24億円。楽天の立花陽三社長(49)は同じく本社が経営母体となっているサッカーJリーグ・ヴィッセル神戸の社長も兼務していますが、イニエスタと32億円の3年契約を結んだ実績もある。メジャーより好待遇を提示しなければ話にならないのですから、マー君獲得のためには24億円の5年契約、あるいは1年30億円の計150億円契約も辞さないでしょう。これまでメジャーからの出戻り選手は峠を越えたケースが多かったのが、本物を呼び戻そうというわけです。プレーオフが終わり、ヤンキースの契約優先期限が切れたら、メジャー他球団とともに争奪戦に参戦する腹づもりです」

 日本球界で1選手に対し20億円以上の年俸を提示するとなれば通常、1球団の総額にも達する。とても現実的な額ではないように思えるが、楽天はサッカーだけではなく野球においても「すでに球界最高年俸を払っている」と言われるだけに、下地はできているようだ。

「毎年、球団別の総年俸が発表されていますが、各選手の推定年俸の総額を計算すると楽天だけ2億円ほど浮きます。これは年俸5億円とされる浅村栄斗(29)の年俸が実は7億円で、インセンティブを加えると最大9億円に達する証左だと思われる。他にも7年21億円契約の則本昂大(29)など、今や大盤ぶるまいは楽天の十八番ですからね」(A氏)

 今オフ、楽天が田中復帰に向けて動き出すか。ストーブリーグの台風の目となりそうだ。

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