お手頃なお値段で、確実な戦力補強を……。今オフの国内FA市場といえば、東京ヤクルト・山田哲人と中日・大野雄大が投打の目玉と言われてきた。
しかし、コロナ禍によって各球団ともに観客動員に制約がかけられ、思うような入場料収入が得られていない。去る9月12日、プロ野球12球団実行委員会が開かれ、そこで政府が発表した「大規模イベントの人数制限を収容人数の50%に緩和する方針」も確認されたが、記者会見に臨んだNPBの井原敦事務局長は「段階的に進めるという考え」と、各球団が集客増に慎重であったことを伝えていた。
「どの球団も60億円強の収支減となると予想していました」(球界関係者)
山田、大野のFA権行使が「1年延期される」なんて情報も出始めた。その影響だろう。ちょっと意外なFA権取得選手に注目が集まり始めた。
「千葉ロッテの松永昂大、埼玉西武のクローザー・増田達至ですよ。松永はチーム事情で二軍調整中ですが、左のリリーバーは貴重です」(前出・球界関係者)
松永は人的補償も発生するBランク選手だが、二軍調整中という現状もあり、「トレードも可能」と予想する声も聞かれた。増田はAランクだが、西武といえば、FA退団選手がもっとも多いチームでもある。FA制度導入から数えて昨年オフの秋山翔吾で19人が新天地を求めている。
「FA退団した選手が多いということは、他球団の情報が入りやすいとも言えます。元チームメートから、移籍することによる特典、査定評価の違い、待遇など、西武との違いを具体的に聞くことができますから。西武の待遇が決して悪いということではありませんが……」(ベテラン記者)
FA権を行使しやすい環境にあるというわけだ。まして、増田は昨年オフの契約更改で複数年を提示され、辞退した経緯もある。リリーフ陣を補強したい球団は多い。増田の推定年俸は1億9000万円。山田、大野のような破格待遇とはいかないものの、「3年7億円」から「4年8億円」の提示は可能だろう。
「球団がFA取得直前の選手に複数年契約を持ち掛け、断られた場合、退団は必至という見方がされてきました。でも、近年は違います。複数年をあえて辞退し、FA取得の翌年の契約更改に高額年俸を勝ち取るという残留前提の交渉戦術もあるらしいです」(前出・球界関係者)
西武・増田が仮に残留を選択したとしても、高額年俸の提示は間違いなさそうだ。
(スポーツライター・飯山満)