7月10日より、日本のプロ野球はいよいよ“有観客”で行われることとなる。逆に言えば、「史上初」という触れ込みで始まった「無観客試合」が観戦できるのも、あとわずかということになる。応援団の鳴り物や観客の生の声援がないことで、実況中継ではこれまで聞かれなかった音が聞こえた。ピッチャーの投じたボールがミットに吸い込まれる音やホームランを打った際の打球音、盗塁でベースにすべりこむ音…。こうした効果音に、野球観戦の新たな魅力を感じ取ったファンも多いのではないのだろうか。
「ラジオ中継で印象的だったのは、ヒソヒソ中継ですね。開幕したばかりの頃、『キャッチャーが内角に構えました』といった実況席の声が打席の選手に丸聞こえになっていたようで、中日の与田監督が抗議する一幕もありました。以降、球場によっては、アナウンサーはただ淡々と小声で試合経過を伝えるのみ。解説者も、ピッチャーの得意の攻めについて言及することはなく、『よく打った』『いいコースでした』と感想をもらすだけで、ラジオのリスナーは物足りなさを感じたかもしれませんね」(スポーツ紙記者)
無観客の弊害は、野球選手たちのコワモテな素顔をも浮き彫りにした。
「オリックスの山本由伸投手は7月5日の西武戦で、なんと1イニングに3つのデッドボールを記録。鋼のメンタルで無失点で切り抜けたものの、打者にぶつけた際、『何やっとんじゃコラ!』と、西武ベンチからドスの利いた野次が飛んでいましたね。これを野次と呼ぶのか、これ以上チームメイトにケガをさせないための注意と呼ぶのかは微妙なところですが、とても子供には見せられないシーンでした。『紳士たれ』をモットーとするジャイアンツでも、小林誠司捕手がぶつけられた際には『やり返したろか!』なんて野次がベンチから飛んでいましたね。ある球団の選手は球審の微妙なジャッジに『今のは低いだろ!』と、いちいち声を出してプレッシャーを与えているように思えました」(前出・スポーツ紙記者)
こうした「野次効果」があったのかどうかはさておき、各リーグのチーム防御率を見ると、今シーズンは7月6日の時点でセリーグ6球団の平均が4.16、パは4.05となっている。昨シーズンはセが3.89、パが3.90といずれも3点台だったことから、昨年に比べて投手陣が打ち込まれているのがわかる。この「打高投低」現象を踏まえ、ある球団関係者は、投手陣の微妙な“クセ”を指摘する。
「投手によっては投げる際に大きな声をあげるクセがあります。もっともわかりやすいのはハマの守護神として知られるクローザーの山崎康晃投手。今季はいまいち安定感に欠けているようですが、彼の場合、『おりゃ』もしくは『うりゃ』と投じたボールはストレートの傾向が強いそうです。そして『うっ』という発声とともに投じるのがツーシーム、という噂がささやかれています。といっても、彼のツーシームはくるとわかっていてもなかなか打てるものではありません。山崎投手の声で球種を絞っている選手はそれほどいないと思いますが、ひょっとしたら“有観客試合”になった途端に本来の調子を取り戻すかもしれませんね」
いずれにしても、無観客のプロ野球中継が楽しめるのも残りわずか。テレビの前にかじりついて、“一音一声”に耳を傾けてはいかがだろうか。
(渡辺俊哉)