「サンリオ」31歳の新社長は「純利益95%減」の業績不振を救えるか

 サンリオは6月12日に声明を発表、7月1日付けで辻信太郎氏が社長の座を退き、新たに辻朋邦氏が社長に就任するという。社長を退く信太郎氏はサンリオの創業者で、なんと92歳!朋邦氏は信太郎氏の孫で、ということは創業以初の社長交代ということになる。

 もちろんサンリオといえば「ハローキティ」の会社として知られる。だが、一風変わった同社の成り立ちについてはおそらくあまり知られていないだろう。

 創業は1960年で、もともとは山梨県産の絹製品を販売する「山梨シルクセンター」という県の外郭団体だった。これを県の職員だった信太郎氏が株式会社化した。だが本業の絹製品販売は早々に頓挫し、小物雑貨の販売に転じる。そんな中、商品にかわいいキャラクターを添えると売れることに気づき、社名をサンリオに変更した後の74年にハローキティを生み出す。その後、徐々に愛されるキャラクターとして広まり、特に90年代に女子高生ブームが起こった折には、彼女らがハローキティのグッズで全身を着飾ったことから「キティラー」なる流行語も生まれてさらに知名度を上げ、現在にまで至る。マイメロディ、ぐでたま、けろけろけろっぴなども同社が生み出したキャラクターだ。

 さてそんな同社だが、近年は経営面で苦境が伝えられていた。

「2月12日に開示された2020年4〜12月期の決算は、売上高・営業利益・純利益のいずれも過去5年間で最悪の数字で、5年前に比べると営業利益は5分の1、純利益は6分の1にまで落ち込むという惨憺たるものでした。社長交代がアナウンスされた12日に公表された20年3月期の決算は当初の業績予想をはるかに下回るもので、特に純利益は前期比マイナス95.1%となっています」(経済ジャーナリスト)

 しかも子会社が運営するテーマパーク「サンリオピューロランド」は、一時は閉館の危機まで囁かれるほど入場者数が落ち込んだが、女性館長のもと、おそよ4年間かけて来場者数を4倍にまで押し上げて、今年の頭にはメディアにも多く取り上げられていた。ところがそこにコロナが直撃したのだ。

 実は今回の社長交代も本来は想定外のことだった。というのも、信太郎氏の息子で次期社長と目されていた邦彦氏は、14年に突然の病で逝去してしまったからだ。ちょうど90年代のブームを過ぎると人気も落ち着き、2000年代に入るとなかなか上向かない業績を、邦彦氏が物販からライセンス・ビジネスに転換させ、事実、復調の兆しを見せ始めていたところだった。そこで急遽、朋邦氏に「世継ぎ」の白羽の矢が立ったというわけだ。

「朋邦氏が社長を継ぐのは衆目が認めるところでしたが、これだけ業績が落ち込んでいるのですから会社を立て直すのは至難の業かもしれません。しかも朋邦さんは31歳の若さです。しかもこの先行きの見えないコロナ禍ですからね。信太郎氏は会長職としてサンリオに残るとか。会社の来歴も変わっていますが、上場企業のこうした“世襲”が世間にどう受け止められるかにも注目が集まりそうです」(前出・経済ジャーナリスト)

 試練の船出となったが、コロナ禍の荒波を若社長は乗り切れるだろうか。

(猫間滋)

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