“オーディオの雄”パイオニア、外資傘下入りで再建

 3月27日、創業から80年になる老舗音響機器メーカーのパイオニアが、東京証券取引所第1部を上場廃止し、外資の傘下に入ることとなった。
 
「創業者の松本望がアメリカ製のダイナミックスピーカーに衝撃を受け、独自に純国産ダイナミックスピーカー『A-8』を開発、その商標が『パイオニア』でした。当初は福音商会電機製作所という社名で販売を行なっていましたが、上場した年に社名をパイオニアに変更。その後も世界初のセパレート型ステレオを発売するなど、まさにオーディオ界のパイオニアとして、オーディオファンに愛され続けてきました」(家電ライター)

 その後も快進撃を続け、1980年代には“絵の出るレコード”としてレーザーディスク(LD)を発売。バブル期にカラオケブームが到来するとLDカラオケが一世を風靡し、ドル箱事業となった。

「その成功から、DVDやプラズマテレビの製造など、デジタル映像機器の開発を行いますが、バブル崩壊後の日本では高価格な製品は受け入れられず、やがて経営は悪化。そんな中でも、2013年に『ワイヤレスポータブルBD/DVD/CDライター』、17年にはUltra HD Blu-ray再生に対応したBDライターと、いずれも世界初の商品を世に送り出すなど、開拓者精神は失われていませんでした。しかし一方で、軸足を置いていたカーナビ事業がスマホのナビアプリ普及の煽りを受け、ついに自力での再建を断念することになったのです」(経済評論家)

 今後は香港ファンドの完全子会社となるが、シャープに続きまたも老舗電機メーカーが外資の傘下に下ったことに、寂しさを感じずにはいられない。

(小島洋三)

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