攻めの街頭広告に見たジャパンマネーの底力、浮沈を握る「内部留保460兆円」

 街から広告が消えた——。今年のGWはそんな話題がネット上を駆け巡っていた。外出自粛が叫ばれる中、人がいない街に広告を出稿したところで効果が期待できないのは当然と言えば当然だが、渋谷をはじめ、首都圏各都市の街頭や駅付近のサイネージ(電子看板)に空白ばかりが目立つあの光景は異様というほかなかった。緊急事態宣言の解除を受けて、街の様子はどのようになっているのだろうか。

「世界的に見ればコロナ禍の影響を最小限に留めたと言ってもよい日本の状況を表すように、徐々にではありますが出稿数も戻ってきています。渋谷においてはスシローGHDや大手の自動車メーカーが大規模な広告出稿を展開しており、早くも話題となっていますね。面白いのが、これらの企業は決してコロナ禍で業績を伸ばした企業ではないという点です。スシローGHDは4月の売上高前年対比44.4%減というまさにコロナ禍が直撃した企業。もうひとつの自動車メーカーにしても、コロナ禍の影響で現在も引き続き国内外工場の停止を余儀なくされています。そんな状況にありながら広告出稿において攻めの姿勢を可能にしているのは、これまで批判の的とされてきていた日本企業の潤沢な内部留保。かつてリーマン・ショック時の資金繰りに苦労した経験から内部留保の確保に勤しんできた大企業は、手元に十分なキャッシュを抱えていると見られています。金融市場では世界中で資金繰りが苦しくなる中、先手を打てる状況にある日本企業の躍進がささやかれ始めています」(経済アナリスト)

「アベノミクス」の“第一の矢”として放たれた日銀の大規模金融緩和を背景に、長らく内部留保を貯めこんできた日本の大企業。積み上げられた約460兆円とも言われる巨額マネーをどのように活用するかが、アフターコロナにおける経済復活のカギになりそうだ。

(穂波章)

ビジネス