「無観客」「移動制限」が大波乱を呼ぶ“コロナ馬券”必勝5カ条《全文公開》

 JRA史上初となる1日5本の単勝万馬券が飛び出したのは4月25日のことだった。その裏を探ると、無観客開催やJRA独自の「コロナ感染拡大防止対策」が影響していたのだ。緊急事態宣言の延長によって、この「コロナルール」は日本ダービーが行われる5月31日まで続く見込みだ。本記事の最後に「必勝5カ条」を記したので、大万馬券的中といこうではないか。

 誰でも一度は狙い撃ちしてみたい単勝万馬券。これまでは開催1場で1日2本、各場の合計でも1日3本が最多だったが、4月25日の京都では、なんと1日4本、3連単では375万馬券も飛び出した。

 その波乱の流れは京都だけにとどまらず、東京でも単勝万馬券1本を含む3連単100万円オーバーが2本と、東西ともに大荒れの1日だった。

 東京3Rの「3歳未勝利」(ダ2100メートル)で11番人気サンチャップリンに本命を打ち、単勝1万6280円、3連単168万1200円を◎△★で的中させた「スポーツ報知」の牧野博光デスクが振り返る。

「競馬記者歴17 年ですが、予想スタイルが本命党だけに『単勝万馬券』の的中は初めてでしたし、『100万馬券』は縁がないものだと思っていました。ただ、このレースは本命党の私から見ても、単勝1.6倍の1番人気メジャーブレイク(6着)が怪しかった。今年1月にデビューして3着、2着、2着。2戦目で騎乗したルメール(40)の手に戻るとなれば『今度こそ』という感じに映りますが、元調教師の方の『短期間で3走も続けて好走している馬は、お釣りがないもの』という教えもあったので」

 とはいえ、4月4日のデビュー戦(10着)で勝ち馬と2.8秒差だった大敗馬を本命視するとは……。

「実はこの馬、ケガで療養中の松岡正海騎手(35)が昨年から高く評価していたんです。今回初ブリンカーで剛腕の内田博幸騎手(49)が継続騎乗となれば、初戦のような最後方からではなく、前に行っての一変があるのでは、と期待したわけです」(前出・牧野氏)

 その予想はズバリ的中したわけだが、他のスポーツ紙を見ると全員が無印のものもあり、単勝万馬券なのもうなずける。

「ここまで人気がなかった理由は、コロナ対策による取材規制が影響しているからかも。松岡騎手の『育成場ではイチオシ』というコメントは私だけが聞いていた話じゃない。ですが今、トレセン内での取材は『スポーツ紙は各社2名まで』で、午後の取材もできません。初ブリンカーの効果については関係者への電話で情報を得たのですが、相手の顔が見えないとコメントの温度がつかみにくいところもありますからね。そのあたりは悩みどころです」(前出・牧野氏)

 こうした新型コロナの感染拡大防止対策は、4月18日から5月31日まで、馬や騎手にも設けられている。

 競走馬は現在、平地オープン競走と障害競走を除いて、美浦所属馬は京都、栗東所属馬は東京への出走ができない(新潟は東西ともに出走可能)。

 騎手は異なる競馬場の障害競走に騎乗する場合を除き、土、日で異なる競馬場へ移動(節内移動)しての騎乗が不可となっている。

 専門紙の栗東担当トラックマンが分析するには、「この『コロナルール』は予想にも影響しますね。GⅠに騎乗する騎手なら土、日とも東京、京都でも重賞が行われますから、主力騎手が東京と京都に分かれ、第3場の新潟は若手騎手への乗り替わりラッシュになると思います。例えば、3連単で14万馬券になった4月26日の福島11R『やまびこS』は、14頭中、唯一の継続騎乗だった5番人気の丸山元気(29)が勝ちましたし、その日の12レース中8レースで継続騎乗騎手が勝利しました。このように騎手の乗り替わりが馬券に影響しそうです」

 京都で単勝万馬券が乱れ飛んだのも「無観客開催やコロナルールの影響が明白だ」と前置きして、このトラックマンが4月25日のレースを振り返る。

「まず1Rで勝ったヴィネット(10番人気、110.4倍)ですが、前日の人気は約60倍でした。それが当日、武豊(51)の騎乗馬が1.9倍の支持を集めたため、オッズがかなり下がった。これは競馬専門の『グリーンチャンネル』(スカパー!やケーブル放送など)が現在は無料で見られるため、朝から馬券を買う人が増えて過剰人気になったせいでしょう」

 この日の京都の売り上げは前年比113.6%アップと好調で、6Rのスリーグランド(15番人気、111.8倍)にしても、上位4頭が4倍台という混戦ムードの中、前日60倍前後のオッズが大きく下がった。

「5Rの単勝万馬券は1.6倍の川田将雅(34)の馬が2着に敗れたことも大きいですが、勝ち馬のリノキアナ(10番人気、141倍)はエピファネイア産駒でヤンチャな面があり、無観客開催の静かなパドックが吉に出た印象でした」(前出・トラックマン)

 4月26日の東京10R「鎌倉S」(3勝クラス)で3連単130万円決着となったケースも「馬の出走制限」が影響したようだ。

「3勝クラスの在籍数をざっくり見ると、東が200頭で西は300頭。今までは関西馬が関東のレースを探して遠征し、勝ちきるケースが多々ありました」

 同じようにオープン以外の東京ダ2100メートルも、長めの距離を試してみたい関西馬不在が波乱を呼ぶ。

「未勝利戦に限れば、開幕からの2戦とも単勝万馬券で、勝ち馬の共通点は先行(3番手以内)抜け出し。1頭はブリンカーで、もう1頭はシャドーロールを着けていたので、馬具の効果も大きかったと思います」(前出・トラックマン)
 同条件で行われる5月17日の東京3R、23日の東京3Rは狙い目かもしれない。

「大波乱の裏にコロナルールあり」ということはわかったが、馬券作戦として今後、どう狙えばいいのか。「週刊アサヒ芸能」連載でもおなじみの伊吹雅也氏が解説する。

「『騎手の移動制限』がある5月31日までは、東京で毎週GⅠが開催されますから、トップジョッキーが手薄になる京都は大荒れ必至。鞍上のコース適性がこれまで以上に各馬の明暗を分けるハズで、狙って高額配当をしとめる絶好のチャンスです」

 今週末でいえば「ヴィクトリアマイル」が東京で行われるため、川田、ルメール、武、松山、福永、デムーロ、和田といった関西リーディング上位10名のうち7名が京都で騎乗しない予定となっている。

「真っ先に注目するのが藤岡兄弟。過去3年(17年4月22日~20年5月3日)、京都でのデータを集計したところ、兄の佑介騎手(34)はダ1400メートル以上で複勝率32%(複勝回収率103%)。施行レース数も多いので積極的に狙ってみたいですね」(伊吹氏)

 弟の康太(31)もダ1200メートルで複勝率34%(同132%)と好成績を収めているが、芝・ダートを問わず、長距離戦でよく穴をあけているという。
「ダ1900メートルの複勝率が32%(同124%)で、芝2200メートル以上が24%(同90%)。ダ1800メートルと1900メートルは1枠の複勝率が26%と非常に高いコースなので、藤岡兄弟が最内枠の人気薄に乗ってくれば、狙い撃ちでしょう」(伊吹氏)

 ベテラン勢からは幸英明(44)の名前が挙がる。

「チャンスがなさそうな馬にもたくさん騎乗している分、トータルの好走率や回収率は地味な数字になってしまいがち。ですが、狙いどころさえ間違えなければ妙味ある存在ですし、騎乗馬の質が相対的に上がるようならば、これまで以上の活躍を期待できます。狙うなら芝1600~1800メートルで、前走8着以内の馬に限れば複勝率は28%(同103%)です」

 距離は芝2000メートルではあるが、先に挙げたように4月25日の京都5R、リノキアナで単勝万馬券を演出。幸といえばダートでズブい馬を剛腕で持ってくる印象もあるが、芝の中距離戦は狙い目だ。

 若手では2年目の岩田望来(19)に注目する。

「芝・ダートともに短距離のコースですばらしい成績を収めています。特に芝1600メートル以下の複勝率は29%(同146%)で、ダ1200メートルなら29%(同117%)でした。父の岩田康誠騎手(46)が落馬によるケガで療養中だけに、有力馬が回ってくるようなら、さらに派手な活躍を見せてくれるかもしれません」

 緊急事態宣言の今こそ、人気馬に踊らされず「夢の大万馬券」の予想をじっくりと楽しみたいものだ。

 以上の考察を踏まえて、コロナ禍の「必勝5カ条」をここにまとめたい。

1、 東京ダート2100メートルは先行馬が穴

2、 新潟は継続騎乗の馬が勝つ!

3、京都のダートは藤岡兄弟の天下

4、京都芝中距離戦は幸英明騎手が妙味

5、岩田望騎手は短距離戦で激走!

 それでは健闘を祈る!

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