これもMLBペナントレースが開催されていないからだろう。早くも今オフの“新契約”が話題となっており、「次の主役はネズ・バレロ氏」の声があがっているという。バレロ氏とは、メジャー3年目のエンゼルス・大谷翔平選手の代理人を務める人物だ。
「ペナントレースは7月開幕が濃厚となってきました。試合数が削減されるとはいえ、今季が終了すれば大谷の契約も見直されることになります」(特派記者)
大谷が米球界に挑戦したのは17年12月。交わされたのはマイナー契約だった。
MLBと同選手会が結んだ新労使協定により、25歳未満の海外選手との契約に使える金額は、契約金や年俸など込みで年間500万ドル(約5億5000万円)ほど。今季の大谷の年俸はおよそ70万ドル(約7500万円)とも言われている。
二刀流の希少価値も加わった超大型契約による出費をケチッた“米球界側の策略”という感もしないではないが、今オフ、大谷はその規制から解放されることになる。成績に見合った年俸交渉が可能となるのだ。当初、大谷の投手復活は5月と目されていたが、新型コロナウイルスの影響でなかなかペナントレースが行われず、その間に投手としても順調に調整。二刀流でシーズンを迎えられれば、注目が集まることは間違いない。
一部報道である通り、ペナントレースが7月から開催されるとすれば、投手・大谷の先発は15〜18試合と予想されている。昨季までシカゴ・カブスを率い、今季からエンゼルスで采配をふるうジョー・マドン監督の構想では週3試合の打者出場を予定しているようで、「大谷が投げる日は指名打者制を使わない」と、登板試合においても打席に立たせるプランを明かしている。投手としては2ケタ勝利に届くかどうか微妙だが、打者としては300強の打席数を得るだろう。
「主軸バッターとして申し分のない成績を残し、2ケタ勝利をおさめたらどうなるのか、誰も予想できません」(米国人ライター)
投打ともに主力級の成績を残せば、代理人のネズ・バレロ氏は「投手」と「野手」の2人分の年俸を要求してくる可能性は十分に考えられる。大谷は金額に固執するタイプではない。固執していたら、日ハム時代の2億円以上もの年俸を袖にして、労使協定で年俸を抑えられた状況での渡米はなかっただろう。しかし、代理人交渉が完全に定着した現代の野球界において、2人分の活躍をする二刀流の査定基準はない。バレロ氏がどう出るのか、大谷が活躍すればするほど、今オフはさらに複雑な交渉を行うことになりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)