大相撲「無観客」決定までの茶番裏(下)650人超の力士が一カ所に

「無観客」とはいえ、「開催」を勝ち取った相撲協会。その代償は春場所中の「濃厚接触リスク」として、大きな問題が浮上しそうな雲行きなのだ。

「警備員たちは、出待ちするファンへの対応に四苦八苦しています。力士ら協会員に公共交通機関の利用を禁止して、宿舎から会場までの行き来をタクシーか自家用車に制限しました。ふだんは、関取以上の特権であるタクシー出勤を全力士に解禁することで、会場周辺が大渋滞になりかねません。中には、立ち合いの時間が差し迫るあまりにファンのいる沿道を猛ダッシュで会場入りする力士も出てくるかもしれません」(スポーツ紙デスク)

 ファンだけではない。年に一度しかない大阪場所である。関西のタニマチとの「濃厚接触」による感染拡大も危惧されている。

「部外者を会場内に入れることは禁止されているが、各部屋への出入りはそれぞれの裁量で認められている。ナアナアの馴れ合いが今回のコロナ騒動で通用するのか。タニマチから差し入れをもらい、食事に出かけることは地方巡業の風物詩。中には関西圏に大口の支援者を持つ部屋もあるから、相撲協会も一律に規制を敷くわけにはいかないだろう」

 芝田山広報部長も口を濁しつつ、

「各師匠に、後援者とよく話したうえで検討してほしい」

 と注意喚起を促すのみ。結果的に後の祭りとならなければいいが‥‥。

 さらに「無観客」と言われながらも、会場側の問題もいまだ山積のまま。

「大阪場所の支度部屋はとにかく狭い。会場入り後の外出が禁止されているため、総勢650人超の力士たちが所狭しとあふれ返ることになります。一人でも感染したら一気に拡大する危険がある」(角界関係者)

 大阪でのライブハウスによる感染爆発のケースを見ても一目瞭然。「クラスター」と呼ばれる感染者拡大の基点とされる人物が会場入りすれば、一気に相撲協会の「楽観」は「落胆」に変わるに違いない。

 3月6日になって相撲協会は、春巡業の来年以降への延期を発表したが‥‥。

「室内の狭い会場で、握手会や写真撮影が行われるなど、ファンとの密な触れ合いがウリなだけに『無観客では意味がない』と開催に否定的な声が大きかった。それでも決めかねていましたが、主催者である一部の勧進元が延期を表明したことが決め手となったようです」(スポーツ紙デスク)

 春場所の成り行きしだいで5月場所の開催も見合わせることになりかねない。今年は東京五輪の影響で夏巡業が中止なだけに人気優先の決断が、足をすくう結果にならなければいいのだが。

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