大手製薬会社「エーザイ」が実施した、てんかん薬の臨床試験(治験)に参加した男性が電柱から飛び降りて死亡していた問題について、厚生労働省は11月29日、薬の副作用が死亡の原因につながったことを否定できないとする調査結果を発表し、ネット上では衝撃が広がっている。
「厚労省の発表によれば、死亡した男性は精神科の受診歴がない健康な20代男性で、今年6月に治験に参加して計10日間の投薬を受け、3日間の経過観察期間があったといいます。経過観察中は男性にめまいや眠気、吐き気の他は異常がみられず退院したそうですが、退院翌日に再び来院して幻視や幻聴があったと訴え、さらにその翌日に電柱によじ登って飛び降り死亡したのです」(社会部記者)
男性は、投薬中から幻視・幻聴の症状が出ていたというが、「病院では様々な音が不快で、早く家に帰りたかった」ということから、入院時にはそのことを伝えていなかったという。しかし、のちに発見された投薬中の手記には、「自分は支離滅裂であり、壊れている感覚がある」「自分がなくなる恐怖がある。殺してほしい」などの状態が、乱れた筆跡で書かれていたことも分かっている。
これにネット上では《治験にはリスクがあることも分かっているが、改めて事実を突きつけられると怖い》といった声が相次いでいる。
「治験の種類によっては、4泊5日の入院検査で20万円以上の謝礼がもらえるものもあり、主婦などの間でも高額アルバイトとして知られ、気軽に利用する人も少なくありません。しかし、治験はあくまで試験段階の薬を投与されるものですから、思いもよらない副作用が出てしまうことも当然あるのです。治験によって健康な被験者が死亡するというのは極めて稀な事例ですが、危険性をしっかりと理解して参加する必要があります」(医療ジャーナリスト)
治験があってこそ我々は安全に薬を利用できるのだが、改めてそのリスクを認識する必要があるのかもしれない。
(小林洋三)