【北朝鮮】「国民の3割が薬物使用」報道 “中毒者急増”が何ら不思議ではない歴史の闇

 国連統計部の資料によれば、北朝鮮の2020年の北朝鮮の人口は約2578万人。ところが、国民のうち約3割が薬物を使用する中毒者で、北朝鮮社会が崩壊に向かって突き進んでいる――。そんな衝撃的な記事が、韓国で朝鮮半島情勢を研究するシンクタンク「SAND南北コリア研究所」発行の「サンドタイムズ」が報じられ、波紋が広がっている。

 記事によれば、北朝鮮は20年1月、新型コロナウイルスによるパンデミックでの鎖国措置実施により一切の輸入が不可能になり、結果、医薬品の類もまったく手に入らなくなった。その代用品として麻薬を常用、依存する人々が急増。その状況が深刻化し、近年では中産階級層の家庭が次々と崩壊しているというのだ。

「北朝鮮国内におけるアヘンや覚せい剤の拡大は、実は1990年代、故・金正日総書記時代に端を発します。当時、外貨獲得ため正日氏の肝いりで始まったのが、『白桔梗(ペクトラジ)事業』と称したアヘン栽培。しかし、その後、アヘンより、覚せい剤のほうが手っ取り早く金になることがわかり、国を挙げて覚せい剤製造に手を出すようになった。ところが94年からの大飢饉『苦難の行軍』で、製造工場が次々に廃業に追い込まれる事態に。結果、生活に困窮した工場関係者らがアヘンや覚せい剤を横流しするようになり、国民の間に瞬く間に麻薬汚染が広がってしまったというわけなんです」(北朝鮮ウォッチャー)

 そこで、北朝鮮は21年に麻薬犯罪防止法を制定。翌22年には刑法を改訂し、薬物密売での最高刑を死刑に引き上げるなどの措置をとったが、汚染は収まらないという。

「というのも、賄賂社会である北朝鮮では、安全部(警察署)であれ、保衛部(秘密警察)であれ、どんな立場にいる人間も金で簡単に転ぶことはよく知られる話。売人たちも、そういった事情を熟知しているため、幹部たちに金や麻薬を渡して操作することが日常茶飯事になった。結果、ミイラ取りがミイラになる、という例え通り、取り締まる側の人間が麻薬漬けにされてしまい、汚染が拡散する事態を招いているわけなんです」(同)

 韓国メディアの報道によれば、北朝鮮国内で出回っている「ピンドゥ(冰毒)」、または「オルム(氷)」と呼ばれる覚せい剤の末端価格は、覚せい剤が1gあたり1万北朝鮮ウォン(約60円)、アヘンは3000~5000北朝鮮ウォン(約18~30円)程度。コロナで閉鎖以降、高額で庶民が入手ができなくなった医薬品より安価なため、医薬品の代用品として、これらが用いられているようだ。

「もちろん覚せい剤は常習性があるため、使えば使うだけほしくなる。かつて裕福だった資産家一家が薬物中毒で財産や家を失い、家族関係も破綻するといった事例が急増しているのだとか。『サンドタイムズ』の取材に対し、『北韓人権情報センター』の研究員は、『少なくとも30%以上の住民(国民)が薬物を使用している可能性がある』と語っていますが、それが事実であれば約780万人が薬物中毒に陥っている可能性があるということ。現在も北朝鮮国内に設置されている診療所は、薬剤不足でほとんど機能していないとも伝えられますからね。今後も中毒患者の急増が懸念されています」(同)

 ロシアへの派兵やミサイル開発の裏で、薬物蔓延が深刻化するとされる北朝鮮。金正恩総書記はこの状況をいかにして打開してくつもりなのだろうか。

(灯倫太郎)

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