「天空の廃墟」が店舗兼住居に…横須賀市の「築64年団地」に応募者が殺到した!

 近年はすっかり見ることがなくなった「長屋」。下町の細い路地などに建てられていた木造住宅は、時代の流れとともに姿を変え、瀟洒な一戸建てや、時には高層のマンションに建て替えられた。

 ところが最近は、かつてのような低層集合住宅をあえて求める人が増えているのだという。神奈川県横須賀市にある「旧市営田浦月見台住宅」もその1つだ。

 同住宅は1960(昭和35)年に整備され、約1万4000平米の敷地に長屋建ての平屋22棟、58戸が並ぶ。各棟間はゆったりと広く、眼下には長浦湾が望める。ところが、時代の流れとともに居住者が減少し、2020年に最後の入居者が去ってからは全ての住戸が空き家のままだ。以来、施設の老朽化が進み、高台に造成されていることもあって「天空の廃墟」と呼ばれていた。

 そこで、横須賀市は、この築64年の団地をフルリノベーションして有効活用するため、官民連携事業として事業者を公募した。選定された業者が提案したのが、「なりわい住宅」と呼ぶ、職住一体型の店舗兼用住宅だ。

 昨年7月に現地で説明会が開かれると、「個人でショップを開きたい」「脱サラして念願だった自分の店を持ちたい」という人が殺到。ほとんどの住戸に仮入居の申込みが入った。応募者の中には「子どものころに住んでいたアパートを思い出す」と、昭和時代のノスタルジックな雰囲気に、一発で魅了された人も多かったという。

 家賃は6~8万円ほどで管理費が別途5000円かかる。住戸の広さは約30~40平米と決して広いとはいえないが、店舗兼住居として利用できることを考えると、人気が出るのも納得だ。

 入居スケジュールは今年7月から順次始まる予定。生まれ変わった廃墟がどんな賑わいを見せるのか、住民はもちろん、関係者も楽しみに違いない。

(ケン高田)

*写真はイメージ

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