普及すれば交通系ICより便利だけど…導入が進む鉄道の「クレカタッチ」の課題

 専用カードリーダーでの挿入、スライドに代わり、ここ数年でクレジットカード決済の主流となったクレカタッチ。決済に要する時間が従来よりも短縮されたが、最近はお店やコンビニだけでなく公共交通機関での導入も相次いでいる。

 首都圏の鉄道会社では、東急が世田谷線を除く全駅で導入し、京王も11月6日から開始。関西では南海が主要駅を中心に設置している。また、近鉄、阪急、阪神、大阪メトロの計548駅では先月29日から実証実験中を行っており、東京メトロも今年度中に実施の予定だ。

 海外では鉄道のクレカタッチが主流となってきたが、日本では大きな問題がある。交通系ICカードのシェアが圧倒的に高いことだ。

 実は、JRグループ各社にはクレカタッチ導入に関する動きはなく、「現時点では導入に消極的なようです」とは昨今のキャッシュレス事情に詳しい全国紙記者。

「交通系ICカードは定期券と一体化しており、特にJR東日本のsuica、JR西日本のICOCAは利用ユーザーが多い。これを活用することで新たなビジネスを創出しています。今や会社にとっては事業の柱の1つですし、クレカタッチを導入すれば利用客減少につながりかねません」(全国紙記者)

 ちなみにsuicaの発行枚数は約9200万枚でICOCAも約3000万枚。我々の生活に欠かせないものとなっており、今さらクレカタッチを導入したところで大きな脅威になるとも思えないが…。

「鉄道をクレカタッチで利用するのは外国人観光客など交通系ICカードを持っていない方に限定されると思います。しかし、駅構内の売店や飲食店、商業施設などの決済に交通系ICではなくクレジットカードを利用する人が増える可能性がある。そうしたことを総合的に考えた場合、デメリットのほうが大きくなると判断しているのでしょう」(同)

 それに導入していない鉄道会社がある以上、異なる会社の路線の乗り継ぎには不便が生じる。鉄道のクレカタッチの今後の普及については、未だ慎重な姿勢を見せているJRがキャスティングボードを握っていると言えそうだ。

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