8月3日午前中、神奈川県海老名市内の田んぼに「NAVY」の文字が入った米海軍の大型ヘリコプター「MH53E」が不時着。岩国基地(山口県)に向かうため厚木基地(神奈川県)を飛び立って間もない出来事で、米海軍によると危険回避するための「予防着陸」だという。
現時点では詳細な事故原因は明らかになっていないが、エンジントラブルの可能性が有力。ただし大事には至っておらず、ヘリも同日11時50分ごろ自力で現場を飛び立っているが、米軍機の不時着、墜落はこれまでにもたびたび起きている。
特に米軍機事故が頻発しているのは沖縄で、2008年10月には名護市のサトウキビ畑、17年10月には東村の牧草地で墜落炎上している。
「幸い今回はすぐ現場から飛び立ちましたが、問題はそれが不可能な場合。米軍は現場を封鎖し、その間は土地の所有者も立ち入りができません。実際、21年6月には沖縄県うるま市の畑にヘリが不時着した際には、米軍が5日間も“占拠”。畑の中に軍用トラックなどの車両が入り、大勢の軍関係者によって踏み荒らされています」(在日米軍問題に詳しい大手紙記者)
また、墜落の場合だと破片が一帯に飛び散り、大きな部品は回収されるが、小さな物は放置されるケースが多い。さらに炎上となれば収穫前なら作物も燃えてしまい、土壌にも深刻な影響を及ぼすなど深刻な損害を被った事例も1つや2つではない。
そこで気になるのは、米軍機が不時着、墜落した際の土地や建物の所有者に対する補償。日米地位協定第18条に基づき、不時着や墜落のように公務中の事故で被害が生じた場合、補償を受けられるとしている。ただし、補償の割合は米軍75%、日本政府25%で、全額が米軍側から支払われるわけではない。
「補償額によっては損害状況や封鎖した期間などによりケースバイケースとですが、実際これまでに被害を受けた土地建物の所有者からは『少ない』といった不満の声も多く上がっています」(同)
しかも、実際に対応するのは米軍ではない。今回の不時着事故でも防衛省南関東防衛局の職員が5日、海老名市を訪問し、内野優市長に謝罪。田んぼの所有者の農家への補償にも対応するとしている。
理不尽な気もするが、これが現実。米軍にはこうした事故を繰り返さないように徹底した安全管理をしてほしいものだ。
※画像は、今回の不時着機と同型のMH53E