6割超が「経済的なゆとりと見通しが持てない」株価4万円・ベア満額回答…“好景気”のマヤカシ実態

 3月に内閣府が公表した世論調査が、金融、商業、霞が関関係者の間で注目されている。

「株価4万円、ベア月額3万円企業続出、日銀の金融緩和解消など景気のいい話ばかり飛び交っていますが、内閣府が3月に公表した昨年11月から12月にかけ行った『社会意識に関する世論調査』の結果によると、実に国民の6割超の人が『経済的なゆとりと見通しが持てない』と答えている。国民の実体経済は相当厳しいことがわかります」(霞が関関係者)

 経済アナリストも調査を踏まえ、こう指摘する。

「『ゆとりが持てない』と答えた層が最も多いのは、世代別では30代が8割近く、40代が7割と子育て世代。つまり、世の中を支え働き盛りの人たちが大きな不安と経済的余裕を持てないギリギリの心境で暮らしている。深刻です」

 このアナリストに言わせると、例えば大企業は30代でも月収50万円超え、さらにトップクラスの商社や不動産、投資会社などは40代で年収1500万円台も多く、月収にして120~130万円。対し都市部でも中小企業や地方企業は40代で30万円前後と大きな格差があるという。株価高騰やベア急騰は一部の大企業や成功投資家の話で、国民の大部分は100円、200円の節約と苦しい生活から一歩も脱し切れていない。

「ちなみに、その格差は安定勤務先として人気のある地方公務員にもあてはまる。東京都下の自治体では平均年収600~700万円台はざらだが、過疎化が進む地方自治体の公務員は40代平均年収で400万円台が多い。公務員でも都市部と地方でそれだけの差が生まれつつあるんです」(前出・経済アナリスト)

 物価高などによって苦しいのは、中小企業などに勤務する若手中堅世代ばかりではない。厚労省によると、去年全国で生活保護が申請された件数は25万5079件と、前年より1万8123件、率にして7.6%増えた。生活保護受給世帯は昨年12月時点において全国で165万3778世帯にまで膨れ上がり、そのうち半数を占めるのは単身の高齢者世帯で84万世帯だ。社会福祉関係者が言う。

「生活保護申請が増えているのは今の値上げラッシユに年金制度が追いついていないことも大きい。例えば国民年金はモデル年金額では月約6万5000円前後。納付期間が40年に満たなければ平均受給額は5万円台。夫婦合わせても10万前後。これで賃貸などに住んでいれば苦しくなるのは当然で、生活保護に駆け込む人が増えるのです」(社会福祉関係者)

 大手不動産シンクタンクなどによると、東京23区の新築マンション平均価格は1億円を超えた。都市部の一部店舗ではラーメン1杯3000円、海鮮丼5000円などという驚くべき価格にも多くの人が舌鼓を打つ。一方で都下の食料無料配布に並ぶ列は日に日に長くなり、そこには若い女性やごく普通の高齢者の姿が目立つ。岸田政権や日銀は、この庶民の悲鳴をどう受け止めるのか。

(田村建光)

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