今、世界では、次期アメリカ大統領にドナルド・トランプ前大統領が返り咲いた場合に合わせた政治・経済体制にシフトさせる「もしトラ」が急がれている。そしてそのシワ寄せが及び、既に具体的に翻弄されているのが、TikTok、Ⅹ、メタといったSNS企業、そしてアメリカ鉄鋼大手のUSスチール買収を進める日本企業の日本製鉄だ。
「アメリカではTikTokの国内利用禁止法案が下院で可決、上院でも可決されて大統領が署名すれば、TikTokの親会社であるバイトダンスが6カ月以内に議決権株式を売却しないと、アメリカではTikTokのアプリの配信や使用ができなくなります。となれば米中のテクノロジー対立は、また新たな段階で激しさを迎えることになります」(経済ジャーナリスト)
TikTok排除は、もともとはトランプ前大統領時代に進められた政策だが、現在のジョー・バイデン大統領政権下でもSNSと先端半導体分野では対中強硬路線を護持。ところが当のトランプ前大統領が、今回の法案には反対の立場という梯子外しのような立場を採っているからややこしい。トランプは20年の大統領選挙での敗退の理由の1つとして、フェイスブック(当時)CEOの選挙資金拠出での大統領選の関与を敵視。TikTokの禁止は「ザッカーシュマック(ザッカーバーグという嫌な奴)」を利することになると主張しているからだ。
するとⅩを擁するイーロン・マスクが、トランプ支持を表明。マスクの真意は不明ながら、マスクはザッカーバーグに格闘技での対決を申し入れていた過去があるだけに、3者の間で様々な思惑が錯綜している。そして大統領選が本格化すると同時に持ち上がっているのが、日本製鉄によるUSスチール買収への反対論だ。
「USスチールは3月15日に買収手続きは年内に完了するとの見込みを示したばかりですが、バイデンは鉄鋼労組の、トランプはホワイトアメリカの票欲しさで共に反対を表明。その場合、買収競争では70億ドル対141億ドルと、買収額ではダブルスコアで日本製鉄に惨敗した米鉄鋼大手のクリーブランド・クリフスが買収の再検討を行う準備があると報道され、とんだ漁夫の利を攫うことになります」(同)
トランプ大統領再登板となれば、ウクライナとガザの戦局、地球温暖化、米中対立のより一層の激化で大きな影響が出るのは必至。日本製鉄ならずとも、日本の政財界も大きく路線変更を迫られる。