「イスラエルvsハマス」がイスラム聖戦へ「第五次中東戦争は始まっている」/「第三次世界大戦」戦慄の導火線(3)

 1月11日、米英軍は、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の軍事拠点への空爆に踏み切った。フーシ派はこの2カ月、紅海で船舶への攻撃を行っている。そこで米英が排除に乗り出したわけだが、ハマスもヒズボラもフーシ派も、イスラエルと敵対し、背後でイランからの支援を受けている過激派組織だ。これにより、中東はより一層緊張が高まっている。

 しかし、日本に伝わるのは、表面的な戦闘の一部だけ。国際情勢アナリストの山田敏弘氏は、すでに水面下では相当レベルにまで危機は広がっていると指摘する。

「現在は、これらイランが支援する組織が、イスラエルおよびイスラエルを支援するアメリカと衝突を繰り返しているという段階にすぎません。イスラエルの政府関係者は、ガザのハマス壊滅を前提としているが、その先のヒズボラ、さらに先のイランに及ぶまで戦火が広がるかどうか。実際、イスラエルとイランは最悪の関係にあり、昨年末にはイランが捕まえたモサド工作員を処刑したり、互いに爆弾テロやヒズボラのミサイル攻撃で応酬を繰り返している。実際には目に見えない新たな第五次中東戦争は始まっているのです。それが今後、どれだけ表立った戦闘にまで発展するかが焦点だと思います」

 イスラエルは今年に入っても、ガザ地区への地上作戦と空爆は変わらず、さらにレバノンのヒズボラの拠点を空爆、レバノンの首都ベイルートでハマス幹部を殺害、南部ではヒズボラ司令官を殺害するなど、着実に戦果は上げているのだが、いたずらに戦闘地域を拡大しているかのようだ。見かねたアメリカのブリンケン国務長官(61)が中東を再訪問し、ネタニヤフ首相(74)に戦争拡大防止などを迫った。

 それが奏功したか、ブリンケン長官が到着する直前の8日、イスラエルは大規模攻撃を縮小し、ハマス幹部の掃討に的を絞った作戦に切り替えると発表。しかし、言葉通り実行するのかは不透明だ。

「ネタニヤフ政権は最悪の極右政権で、支持率15%と、国内では退陣を求める声が強い。だからネタニヤフとしては、戦果を上げて延命を図りたいわけで、戦略的な目標を達成した後も戦争を長引かせるかもしれないのです」(山田氏)

 となれば、このままズルズルと長期戦となるのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏も〝ラスボス〟イランとの対峙が焦点になるという。その上、間違いなく局面が変わるのは、イランが核武装に乗り出した時だと説明する。

「昨年11月、IAEA(国際原子力機関)の報告によれば、イランは核兵器級に近い濃縮度60%のウランを製造し続けている。90%以上の濃縮で完成となりますが、60%まで来ればもはやいつでも完成できる状態です。なぜ完成させないのかと言えば、核兵器不拡散条約(NPT)の体制では国際的な反対に遭うからです。しかし、現状では、国連安保理でもロシア、中国が反対せずに核を持てるかもしれない。そうなると黙っていないのはイスラエルです。判明している製造場所を空爆。それでも阻止できないとなれば、大規模な軍事オペレーションを展開することになる。こうなると、これまで背後に控えていたイラン本国にまで戦火が広がることになり、第五次中東戦争の火蓋が切って落とされてもおかしくないのです」

 イランの核武装については、専門家の間でも、見解がわかれるが、イランにとっては長年の悲願ゆえに、その可能性を低く見積もってはならない。

 もはや核を交えての第三次世界大戦へ。一刻の猶予もならない不測の事態に、わが国はどう備えるのか!

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