「電撃引退」イクイノックスに報道されない「前代未聞の珍記録」があった!

 その父、キタサンブラックのオーナーだった歌手の北島三郎もねぎらった、G1・6連勝のスーパーホース、イクイノックスの突然の引退。

 この秋も天皇賞・秋とジャパンカップを圧倒的な強さで制していただけに、11月30日に同馬の引退が発表されると、ファンからは驚きとともに「来年もぶっちぎりで勝ってほしかった」など惜しむ声が続々と寄せられた。検索トレンドでも即座にイクイノックス関連のワードが上位を独占した。

 世界のレーティングでも1位で、もうこれ以上評価を上げようのないイクイノックスだが、それにしても、これほど惜しむ声が止まないのには同馬が歩んだ道のりにも理由があるようだ。競馬ライターが説明する。

「まだ3歳時の昨年の天皇賞・秋から始まり、有馬記念、今年に入ってドバイシーマクラシック、宝塚記念、天皇賞・秋の連覇、そしてジャパンカップとG1だけを6連勝。しかも、2着馬に惜しいと思わせるレースもないほど圧倒的な強さと貫録をファンに届けました。あの百戦錬磨のルメール騎手が涙ぐむほどですからね。そんなイクイノックスが、先日のジャパンカップで前代未聞の『珍記録』を打ち立てたんです」

 競走馬にとってまず目指すG1レースは、3歳時のクラシックと呼ばれるレースだ。牡馬なら皐月賞、日本ダービー、菊花賞。牝馬なら桜花賞、オークス、秋華賞。あの名馬ディープインパクトやオルフェーブル、ジェンティルドンナやアーモンドアイもそのクラシックタイトルをいくつも獲っていた。ところが、イクイノックスにはそのクラシックタイトルが1つもないのだという。

「皐月賞も日本ダービーも実に惜しい2着でした。裏を返せば、イクイノックスは全競走馬が目指すクラシックとは無縁のまま歴代最高獲得賞金(海外4億5889万100円含む22億1544万6100円)を達成する超名馬に成り上がったんです。実はクラシック無冠でG1を6勝した馬は過去にモーリス(国内と海外3勝ずつ)、ロードカナロア(国内4勝、海外2勝)の2頭がいますが、両馬ともマイルと短距離路線の馬でそもそもクラシックには参戦していません。クラシックに参戦しながらそこで戴冠できず、G1・6勝を達成したのはイクイノックスが初なんですね。実はこの記録、どのメディアも報じていませんが、驚くべきことなんです。しかも6勝を昨年の天皇賞・秋から1年ちょっとで達成しています。これは彼が日本ダービーあたりが頂点になる早熟系の馬ではないという証拠ですし、父であるキタサンブラックの古馬になってからの活躍を考えても、この後もまだ伸びしろがあった可能性は高いのです。それだけに惜しむ声が止まないのでしょう」(前出・ライター)

 G1最多勝利は名牝アーモンドアイの9勝だが、イクイノックスがあと1年競走馬生活を続けていれば破れない記録ではなかったはず…そんな思いが競馬ファンの声に繋がっているという。

 それでも多くのファンを魅了したイクイノックスには次なる種牡馬という大仕事が待っている。産駒のデビューを夢見て、お疲れ様でしたという気持ちがファンの本音であることは間違いないだろう。

(飯野さつき)

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