主は中央に、周りに妻、娘、妹と一家勢ぞろいして、記念日を祝った。写真中央に収まるのは北朝鮮の金正恩総書記。こちらはいつも通りの人民服だが、妻の李雪主、娘のジュエ、妹の金与正はなんとTシャツ姿だ。しかもTシャツの胸元には「NATA」の文字。北朝鮮の金王朝にあっても、めでたい時はこういった〝お茶目〟な演出を行うのかと、驚く。「NATA」は北朝鮮版NASAとも言うべき「国家航空宇宙技術総局」のことだ。
「北朝鮮の朝鮮中央通信は、11月21日の軍事偵察衛星『万里鏡1号』の打ち上げに成功し、23日には金正恩がNATAを訪れて関係者を激励。夜には打ち上げ成功を祝う宴席が設けられたとして、この写真を24日に公開しました。北朝鮮にとって軍事偵察衛星の保有は念願の一つ。5月と8月と過去2回の打ち上げに失敗していただけに将軍様もよほど喜んだのでしょう。『宇宙強国の到来』と誇らかに宣言したとか」(全国紙記者)
金正恩が軍事偵察衛星の打ち上げ成功で小躍りしている傍らで、米宇宙軍はさっそく人工衛星追跡サイト「スペーストラック」にて管理番号を付与、韓国では裏にロシアの支援があったがための成功で、さらに来年は核開発にまたも乗り出すのでは…と危機感を強めている。
一方日本は、松野博一官房長官が当初、衛星の打ち上げには否定的な見方を示していたが、24日にようやく木原稔防衛大臣が「何らかの物体が地球を周回」と成功を認めるコメント。政府としては、実際に「物体」が衛星としての機能を果たしているかを確認してからとの慎重姿勢なのだろうが、関係各国との温度差を考えると、どうも後手後手の感は否めない。
「今回は衛星が切り離されたあと、打ち上げ用ロケットが爆発しています。狙いは打ち上げに使われた新型ロケットの『千里馬1号』が韓国やアメリカ側によって回収・分析されるのを防ぐためでしょう。過去にはなかったことなので、韓国側の分析のようにロシアの技術協力の影がうかがわれ、いずれにしても北朝鮮のロケット技術が進歩していることは確実です」(同)
これとは別に11月中に北朝鮮は中距離弾道ミサイルの固体燃料化にも成功したと伝えられている。固体燃料は液体燃料より開発が難しいが、固体化されると長期保存が可能になり、液体燃料のように注入する必要がないため発射までの時間を短縮できるので、いつ地下施設から発射されるか補足しづらいまま、例えば在日米軍基地に飛んでくるやも分からない。
北朝鮮は目下、ウクライナと中東の戦争で兵器の特需にあると、韓国国家情報院が報告している。まさに火事場泥棒の武器商人ぶりを発揮しているわけだが、となるとカネが生まれ、そのカネがロシアの支援を受けつつ最新兵器の開発に回される。そんな危機的な状況にもかかわらず「何らかの物体が…」との見解には脱力するばかり。日本の分析能力は果たして大丈夫なのか。
(猫間滋)