強硬派ネタニヤフが“黒幕”イランに空爆か/「第三次世界大戦」勃発の最悪シナリオ(1)

「これはイスラエルの9.11だ」、ハマスによる大規模テロが世界を震撼させている。すぐさまイスラエル軍は報復を開始、同盟国・米国もすかさず全面支援の構えを表明した。一方、長期戦が続くウクライナ戦線、さらには東アジアへも不穏な動きが飛び火、安眠を貪る日本へも戦火は拡大―。「第三次世界大戦」の最悪シナリオを総力レポート!

 ユダヤ教の祭日である10月7日早朝、イスラエルは突如〝血の海〟と化した。パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム組織ハマスは、3000発以上のロケット弾を発射して注意をそらす間、ガザ地区にそびえ立つ10メートルの分離壁を爆破。武装した戦闘員がオートバイや徒歩で越境すると、空からは飛行部隊がパラグライダーで降下、さらには地中海ルートを使ってイスラエルへ侵入。まさに陸海空からの一斉テロ攻撃が展開された。

 この奇襲攻撃により900人以上の犠牲者を出し、100名以上の人質が拉致されると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相(73)は「われわれは戦争状態にある」と声明を発表。即座に報復戦を開始した。

「戦争状態に突入したことで、中東の軍事強国イスラエルは『鉄の剣作戦』と称するオペレーションを開始。ガザ地区への断続的な空爆を続け、水、食料、電気、燃料も遮断した。さらに、地上侵攻に向けて境界に10万の兵を待機させ、緊張が高まっている」(全国紙外信部記者)

 同盟国の米国も即座に動き出す。ジョー・バイデン大統領(80)は、民間人殺害を計画・実行したハマスを「悪の所業」と非難。10日までに最新鋭の米原子力空母ジェラルド・フォードを筆頭とする空母打撃群を東地中海に展開させた。

「空母の派遣は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの動きを牽制するためです。ハマスの10倍にあたるロケットを所有するヒズボラは、翌11日にイスラエルに向けてミサイルを発射しています」(全国紙外信部記者)

 10日には、シリア領内からも砲撃を受け、これ以上激しくなれば、イスラエルは南北の二正面で軍事作戦を迫られる。ただ、今のところヒズボラは「様子見」だと、国際ジャーナリストの山田敏弘氏は解説する。

「ハマスの攻撃は明らかにテロ行為。国際社会の目もあるし、自分たちの争いではないので、そこに加わって何を得られるのかわからない。威嚇行為はしても、ヒズボラは今のところ深くは関わらないでしょう」

 対イスラエル勢力もそれぞれの思惑が交錯する中、最大の焦点はハマス支援を公言するイランの存在だ。軍事評論家の潮匡人氏はこう見立てる。

「現時点でイランが攻撃に関与した証拠はないですが、ロシアも含めて可能性はあります。これまでのハマスの攻撃に比べても、今回は明らかに質と量が違う。ここまでの作戦を成功できたのは、訓練や装備を供与するなど軍事的な大国が背後でサポートしたことが容易に考えられます」

 ヒズボラもイランの支援を受けているだけに、イランが関与した可能性は高い。

 ハマスが奇襲攻撃をした理由の一つとして、米国の仲介の下、アラブの盟主・サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けた動きが挙げられている。実現すれば中東で包囲網が形成されるだけに、イランとヒズボラは正常化に反対していたのだ。

 今回の衝突は、中東地域の安定化を目指す一方、台湾海峡・南シナ海で揺さぶりをかける中国に戦力をシフトしていた米国にとって大きく目算が狂ったと言える。

「ウクライナに巨額の軍事支援をする中、イスラエルも支援するとなれば、武器・弾薬の備蓄も含めて米国だって体力がもたない。国内でも、10月3日にウクライナ支援を巡り、下院本会議でケビン・マッカーシー議長(58)が解任される史上初めての出来事が起きた。今後も審議が滞って凍結となれば影響が出るのは必至で、ロシアが攻勢を強めることが懸念されています」(在米特派員)

 報復攻撃を続けるイスラエルは、地上侵攻へ踏み出す構えだ。果たして今後の「最悪のシナリオ」とは、何か?

「強硬派のネタニヤフ首相が、イランが関与していたと言い出して、イスラエルがイランを空爆することです。米国が止めることができなければ、第五次中東戦争に発展する恐れも」(山田氏)

 そうなれば、もはや誰も止める術はなく、何かをきっかけに、どこで開戦してもおかしくない危機に直面することになる。潮氏はこう話す。

「定義にもよりますが、16年にローマ教皇(86)は『第三次世界大戦はすでに起きている』と指摘しています。ここまで世界が危機的状況になったのは、米国が何もしないから。直近でも、21年にアフガニスタンから米軍を撤退させ、翌22年にはロシアによるウクライナ侵攻でも支援をするだけ。関与する意思と能力を示さなかった〝弱腰〟の米国など怖くない。台湾有事についても中国の習近平国家主席(70)はこう考えているはず。『やるなら今だ』」

 もはや日本も対岸の火事ではない。安全地帯と気を緩めてはいられない険悪な情勢なのだ。

ライフ