小池百合子に惑わされるな!「太陽光発電」の闇(6)「土砂災害警戒区域」に230カ所も

 この現場から南に約300メートルほど離れた軽井沢地区では、敷地面積約60.5ヘクタールもの大規模な太陽光発電所建設計画があり、しかもその予定地がかなりの急斜面に造られる予定だったことから、今も地元で反対運動が起きている。

 この地区の祭りに「猫おどり」という町おこしイベントがある。これは江戸時代の天保年間に軽井沢に住む男が飼っていたネコが、人の言葉を解し、夜な夜な笛を吹いて踊っていたという伝説から生まれたものだ。

 この「猫おどり」をモチーフにしたアニメ「絶対少年」(NHK-BS2 05年放送)では、猫おどりの会場に現れたネコと不思議な光の大群を会場に集まった人たちが追いかけて、猫おどりの会場が無人となる。その直後に小学校の裏山で土砂崩れが発生し、猫おどりの会場を呑み込んだ。結果的に軽井沢の住民は、ネコのおかげで難を逃れる--というストーリーが描かれているのだ。

 地元の住民女性はあきれ顔で語る。

「アニメ『絶対少年』には土砂崩れの話が出てきますが、この地区は、本当にそうした災害に悩まされたところなんです。だからこそ皆、太陽光発電所の建設には反対しているんです。外から来た業者などにわかるはずがありませんよ」

 千葉県市原市大桶では2018年11月6日、太陽光発電所の建設現場から盛り土が崩落し、大量の土砂が市道「うぐいすライン」に流れ込んだ。

 盛り土が崩落した際に、すぐ下の道を男女が乗った1台の車が通っており、間一髪のところで難を逃れているのだ。

 この「うぐいすライン」は生活道路以外であるほかゴルフ場に行くための重要な通行路だったのだが、復旧工事が終わり、開通したのは2020年2月。実に1年3カ月もの間、通行止めとなってしまった。流れ出た再生土は約3万6500立方メートルにも及んだ。

 事故発生直後に現場に駆け付けた岡泉・市原市議がその惨状を語る。

「残土が背丈よりずっと高い位置まで道を塞いでいました。ブルドーザーが埋まっていて、当初は中に人がいるのではないかと疑われ、消防の人たちが祈るように作業をしていた姿が忘れられません」

 同じ市原市では2019年9月の台風15号の際、山倉ダムに浮かぶ太陽光パネル約4万枚が強風に煽られて破損。一部から火が出て、燃え広がった。こちらも復旧工事に約2年を要している。

 2023年5月14日付の読売新聞は、全国の太陽光施設のうち、「土砂災害警戒区域」内に立地し、近くに住宅が存在するものが230カ所あると報じた。うち特に危険度が高い「特別警戒区域」は34カ所に達するとしている。

 自然に優しい再生可能エネルギーの実態は、地元に厄災を招きかねない「迷惑施設」の筆頭なのである。

*写真は住宅裏山の急斜面に敷き詰められた太陽光パネル(沖縄・うるま市)

三枝玄太郎(ジャーナリスト)1991(平成3)年、産経新聞社入社。社会部などで警視庁担当、国税庁担当、東北総局次長などを歴任。 2019(令和元)年退社。以後はフリーライター。主な著書に「19歳の無念 須藤正和さんリンチ殺人事件」(角川書店)、「SDGsの不都合な真実」(共著/宝島社)など。文化人放送局で水曜日レギュラー、「Xファイル 未解決事件」に出演。YouTube「三枝玄太郎チャンネル」を配信中。

*「週刊アサヒ芸能」10月12日号掲載

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