シニア向けスマホ「らくらくスマートフォン」シリーズなどを製造・販売するFCNT(旧・富士通コネクテッドテクノロジーズ)などグループ3社が5月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したと発表した。携帯端末に関する事業は停止する予定だというが、今後シニア層はスマホ難民になってしまうのだろうか?
「FCNTは富士通の携帯電話事業を引き継ぎ、『arrows』シリーズや『らくらくスマートフォン』シリーズを販売し、人気を得ていました。しかし近年では携帯端末の売り上げが伸び悩み、さらに円安や半導体不足による仕入れ値の高騰によって業績が悪化したといいます。帝国データバンクによると、グループ会社間の債権債務を除いた負債合計は約1193億円にのぼるといいます」(大手紙記者)
今後、らくらくコミュニティなどのサービス事業はスポンサー支援が表明されているものの、携帯端末の製造・販売や修理・アフターサービスなどに関してはスポンサーが見つかっていないため一時停止した。
「現時点ではNTTドコモがアフターサポート体制を整え販売を継続するとしており、現在販売している端末の修理対応も続けることを発表しています。とはいえ、スポンサー企業が見つからなければ新しい『らくらくスマートフォン』の製造・販売はされないことから、徐々に姿を消していくかもしれません。NTTドコモ・モバイル社会研究所の調査によると、シニア層のスマホ利用率は60代で9割、70代で8割と上昇傾向にあることが分かっていますが、その一方でシニア向けスマホの利用率は60代で8%、70代で27%と減少傾向にあるため、それも致し方ないでしょう」(ITジャーナリスト)
ただし、シニア層にはガラケーユーザーがまだ1000万人以上いる。ガラケーの3G回線はauはすでに停波、ソフトバンクは24年の1月下旬、NTTドコモは26年3月末にサービス終了し、あと数年で使えなくなることから、この人たちは否応なくスマホに乗り換えさせられることになる。そのとき「らくらくスマートフォン」が市場にないと…大量のスマホ難民が出現するかもしれない。
(小林洋三)