安倍晋三元首相の死を受け、「元総理の思いを受け継ぎ、憲法改正など自身の手で果たすことができなかった難題に取り組む所存です」として、同氏の悲願だった改憲への意欲をのぞかせていた岸田文雄総理。
しかしその後、自民党議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い関係が露呈。連日のように、教会と関係があったとされる“新たな顔ぶれ”が登場しているが、そんな中、東京新聞が《旧統一教会側と自民党、改憲案が「一致」 緊急事態条項、家族条項…濃厚な関係が影響?》と題する記事を掲載したのは今月2日のこと。
記事によれば、自民党が2012年にまとめた「憲法改正草案」と、旧統一教会の政治部門とされる国際勝共連合(勝共連合)の改憲案とが、「緊急事態条項」や「家族条項」などで一致しているというのである。
「旧統一教会は憲法に『家族保護』の文言を追加するよう主張していますが、自民草案は24条を新設。その条文には『家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される』とあり、東京新聞は『双方の“家族重視”は、よく似通っている』と指摘しています。旧統一教会は『真のお父さま』である創始者の故・文鮮明氏のもと、神様の下に人類が一つの家族である世界を作り出すことを理想に掲げ、2015年に家庭連合と改名した後は、より『家庭』や『家族』という文言に重き置いて活動してきました。その意味でも、両者の改憲案が類似していることは明らかです」(社会部記者)
さらに自民草案では、現憲法20条にある《いかなる宗教団体も政治上の権力を行使してはならない》の文言が削除され、国およびその機関の宗教活動を禁じた同第3項に《社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない》と加えるなど、信教の自由への制限と政教分離の原則が緩和されている。
「自民草案の『信教の自由』には、政治家の靖国神社参拝の違憲性を払拭する狙いもあったわけですが、旧統一教会との関係が浮き彫りになったことで、世論は間違いなく旧統一教会が自分たちの理想を実現するために自民党に取り入り、憲法にまで手を突っ込んできたとみるはずです。そうなれば、選挙を手伝ってもらったというレベルの話ではとても収まらなくなる。SNS上ではすでに《『子ども庁』を『子ども家庭庁』に名称変更したのも、統一教会の要請に違いない》なんてコメントも飛び交っていますからね。今のままでの改憲成立など、極めて難しいと言わざるをえません」(同)
ちなみに東京新聞の記事は、デスクメモとして最後をこう結んでいる。
《安倍氏が2006年に上梓し、改憲を訴えたのは「美しい国へ」。その2年前、勝共連合初代会長久保木修己氏の遺稿集として出た本が「美しい国 日本の使命」。偶然か、思想の一致か。今となっては2人とも故人だから確かめられないが、こんな縁が感じられる改憲は不気味だ》
自民党と旧統一教会との、縁の深さを感じるばかりだ。
(灯倫太郎)