中日の左腕投手が“モデルケース”になりそうだ。
去る7月26日、プロ野球オールスターゲーム第1戦の試合前、オンラインによる選手会の臨時大会が開かれ、FA権取得年数(現状国内8年、海外9年)の6年統一、人的補償の撤廃などを12球団側に訴えていくことが決議された。
「これに対し、選手会との調整役を務めてきた広島・鈴木清明球団本部長がコメントを出しました。コロナ禍で大変なんだから、今言う話ではないとの主旨でしたが、人的補償のシステムは見直すべきとの意見は各方面から出ていました」(ベテラン記者)
選手の中には、人的補償を気にしてFAをためらう傾向もあるという。
そこで注目が高まっているのが、今年6月に国内FA権を取得した中日の左腕・松葉貴大の去就だ。
現行ルールでは、松葉は人的・金銭的補償の発生しない「Cランク」。松葉は権利行使するか否か、何もコメントしていない。しかし、争奪戦に発展すれば、選手会の制度見直しの訴えは加速していくだろう。
「松葉の評価って難しいですよね。中日に移籍してきて、制球力が上がりました。でも、『バンテリン専投手』とも言われていますし、長いイニングを投げられるのかどうか…」(名古屋在住メディア)
バンテリン専投手とは、中日の本拠地・バンテリンドーム専用の投手という意味。松葉はこれまで11試合に登板し、うち10試合がホームゲーム(7月28日時点、以下同)なのだ。勝ち星は4勝止まりだが防御率2.90と安定しており、長所は四球率の低さ。短所は長いイニングを投げられず、ピッチングにこれといった特徴がないこと。
「広いバンテリンドームでは一発が出にくいので、技巧派の松葉が得意とするのも分かります。松葉自身、『他球場でも!』『6イニング以降も投げさせてくれ』と思っているはずです」(同)
中日には今季、支配下契約を勝ち取った高卒2年目の左腕・上田洸太朗もいる。上田はプロ初勝利こそまだだが、強力な阪神、ヤクルトの打線を相手に先発して好投している。上田に働き場所を奪われつつある松葉が権利行使した場合、どうなるのか?
「安定していると評価されるのでは。ローテーションの4、5番手かもしれませんが、左の先発は貴重です。現年俸は2800万円とお買い得なので」(同)
争奪戦になれば、「人的補償がないから」とも解釈されるだろう。
これまでFA権を行使した選手の慰留に失敗した側の旧在籍チームが、「誰にしようかな〜」と、獲得側にプレッシャーを掛けてくる雰囲気も否めない。松葉の今後が注目される。
(スポーツライター・飯山満)