血圧の「新常識」降圧剤は絶対に飲むな!(1)比較試験にインチキがあった

 脳卒中や心不全など、さまざまな疾患の原因として恐れられている高血圧。その治療のために処方される降圧剤を、あなたは何の疑いもなく服用しているのではないだろうか。新たな基準値によって大量にばらまかれる降圧剤に殺される前に、ここで高血圧とのつきあい方を学ぶべし!

 この4月に日本高血圧学会のガイドラインが5年ぶりに改訂された。高血圧とは上が140mmHg、下が90mmHg以上の数値を出す症状を指す。今回の改訂での大きな変化は、合併症のない75歳未満の患者の「降圧目標」が、130mmHg/80mmHg未満となったことだ。降圧目標とは、高血圧と診断された人が治療でどこまで下げるべきかを示したものなのだが─。

「この新基準のせいで間違いなく死者が増える」

 と警鐘を鳴らすのが、近藤誠がん研究所所長・近藤誠医師だ。

「上下の数値を各10mmHg切り下げることにより、これまで降圧治療が施されていなかった人たちにも薬が処方されることになった。この変更で、降圧剤の対象人口は1000万人以上に増えるはずです」

 現在、日本における高血圧の患者数は約4300万人。うち2000万人以上が降圧剤を服用しており、70歳以上の場合、なんと2人に1人の割合だと言われている。

「厚生労働省の調査でも、高血圧を来院理由とするものが、あらゆる外来患者の9%を占めていてダントツ。ところが、最も信頼できる研究によれば、血圧を基準どおりにしっかり下げると患者さんは逆に不健康になり、死亡率が上昇することが示されています。そんなリスクを一切公表せず、新基準を設けることで降圧剤服用者の範囲をさらに広げているのです」(近藤氏)

 必要のない患者に降圧剤が処方される。これが事実だとしたらとんでもない話だが、ではなぜ今回、降圧目標が引き下げられることになったのか。

「特に大きく影響したのが、2017年に米国で改訂された高血圧ガイドラインなのですが、実はこの改訂、130〜140mmHg/80〜90mmHgの間の数値に加え、心臓血管病、糖尿病、慢性腎疾患などがある人たちは治療しなさい、と言っているだけのこと。さらに言えば、その血圧レベルでも、健康な人には降圧剤による治療は勧めていないのです」(近藤氏)

 しかし、このガイドライン変更の根拠となった2つの研究には大きな欠陥があるという。近藤氏が続ける。

「まず、上の血圧が130〜180mmHgの心臓血管病のリスクが高い人たちを集めて実施された『スプリント試験』という比較試験。血圧を130mmHg未満にすると、心臓血管病の発症頻度が減る、という結果とされていますが、論文のグラフを見ると、心臓血管病の発症頻度が減りだすのは、試験開始後1年以上たってから。心臓血管病が高血圧の影響で生じるならば、血圧が下がればすぐに発症率が減りだすはず。にもかかわらず、1年以上たってから薬の効果が現れたという結果は、比較試験においてなんらかの欠陥があったか、あるいはインチキがあったかのどちらかです」

 さらに、これまで世界中で実施された123件の比較試験の結果を集めたデータも、集計対象となった個々の比較試験の条件(治療開始前の血圧レベルや降圧目標など)がバラバラで、

「いったいどういう計算をしたかもブラックボックス化されていて不明です。データ捏造や隠蔽が横行する医療産業の現状から見ると、こういう集計結果を信じろというのは、とうてい無理があります」(近藤氏)

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