八村塁のNBAドラフト指名で日本人が抱く疑問「1巡目って何?」

 バスケットボール日本代表で、米ゴンザガ大学3年生の八村塁が、日本バスケ界で史上初の快挙を達成だ。

 6月20日(現地時間)に開催された米プロバスケットボール「NBA」のドラフトにて、ワシントン・ウィザーズから1巡目で全体9位指名を受けたもの。日本人選手の1巡指名は史上最高位となり、ドラフト指名からの入団は初めてのこととなる。

 ゴンザガ大学男子バスケットボール部の公式サイトではさっそく、八村が同大出身者としては史上8人目のドラフト1巡指名になったとのニュースを掲載。日本スポーツ界全体にとっても嬉しい報せとなったが、今回のドラフトで多くの日本人にはピンと来ない部分もあるという。アメリカンスポーツ事情に詳しいスポーツライターが指摘する。

「各メディアは一斉に『八村が1巡目9位で指名』と報じました。この“1巡目”というのが日本人にとっては聞きなれず、しかも9位指名だというのですから《ドラフト1位指名じゃないの?》との疑問を抱く人が少なくないのです。日本でドラフトと言えばプロ野球がおなじみですが、プロ野球では12球団それぞれに1位指名選手がいるもの。そのため八村のドラフト順位がどれくらいの価値があるのか、いまいち伝わりきってないのが実情ですね」

 この1巡目は英語だと「ファースト・ラウンド」と呼ばれ、日本プロ野球のドラフト1位選手はアメリカだと「1巡指名選手」(ファースト・ラウンダー)に相当する。実際にはプロ野球のドラフトでも01年以降は1巡目、2巡目といった表現を採用しているのだが、一般には浸透しておらず、スポーツ報道では今でも1巡指名の意味で「ドラフト1位」という用語を使っているのが実情だ。

 一方で日本の場合、外れ1位といったケースはあるものの、基本的には1位指名選手12人のあいだに序列はなく、全員が等しく扱われる。それに対してアメリカでは、同じ「1巡指名」のなかにも大きな差があるというのだ。スポーツライターが続ける。

「アメリカで重視されるのが“全体〇位指名”という順位です。八村なら《ナインス・オーバーオール・ピック》となりますが、同じ1巡指名でも全体1位と全体30位では大きな差があり、それこそ契約金も違ってくる。各順位の価値を示した“バリューチャート”に従うと、NBAでは全体1位を100ポイントとした場合、全体30位の価値は20ポイントほどに激減します。ちなみに八村の全体9位は50ポイントほど。一見低いようにも思えますが、一桁指名は超高評価の証であり、日本人ファンは存分に八村のことを誇っていいのです」

 ドラフト順位予想の“モックドラフト”では、八村を全体15位前後に予想する声も少なくなかった。それが実際には一桁台の全体9位と高く評価されたわけで、八村に寄せられる期待はますます高くなっていきそうだ。

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