これぞ本当の撮り鉄!? JR東、駅員カメラ導入に全鉄道関係者が期待するワケ

 大手民鉄16社が加盟する日本民営鉄道協会によれば、JR6社など全国の鉄道会社で2020年度(2020年4月から2021年3月)に発生した、駅員や乗務員など鉄道係員への暴力行為件数は377件。こうした背景を受け、JR東日本は夜間に勤務する駅員や乗務員らが常時装着する「ウエアラブルカメラ」を4月から配備する方向で検討していることが24日、共同通信などによって報じられた。

 記事によれば、ウエアラブルカメラは手に持たず胸などに装着する小型のもので、現時点で具体的な配備方法や時間、導入する駅などについては発表されてないものの、

「同社では20年に、新幹線車内を巡回する警備員がカメラを装着する実証実験を実施。走行する新幹線車内での通信状況や、異常発生時にライブ映像を見ながら遠隔で後方支援するといった、運用面での検証を行ってきました。今回、カメラを配備するのは、夜勤や宿泊業務を行う駅員のみですが、裏を返せば、それだけ電車内や駅構内での利用客による迷惑行為が深刻化しているということ。防犯目的での導入は鉄道業界では初めての試みということもあり、社員の安全確保と利用客のプライバシー保護を両立できるかどうか注目されていました」(鉄道ジャーナリスト)

 報道を受け、SNS上には《これぞ、本当の撮り鉄!鉄道係員が乗客とのトラブルを未然に防ぐ抑止力になり、さらに犯罪記録の意味合いもある。大賛成!》《昨今の鉄道現場での凶悪事件を考えると、有事の際には絶対に必要。小さなカメラが大きな効果となりそう》という意見が続出。ただ、一方では《これで駅員に対する理不尽なクレームや暴力が根絶されるとは思えません》《プライバシーの問題もあるし、大切なのはカメラに残された記録をもとに鉄道会社がどういう対応をするかだと思う》といった意見も。

 JR東日本では昨年7月、主要駅の安全対策として顔認識技術を用いて刑務所からの出所者と仮出所者の一部を駅構内で検知する仕組みを導入したものの、9月には「社会的なコンセンサスがまだ得られていない」として取りやめた経緯がある。

「顔認証システムに反対する日弁連は、公共性が高い駅構内での運用はプライバシー権を著しく損なう恐れがある上、すべての人を監視対象にすることにもなりかねず、自由な市民社会が脅かされる、としています。ただ、昨今の鉄道内での凶悪事件に対し、鉄道会社として手をこまねいているわけにはいかない。とはいえ、国鉄時代の『鉄道公安職』のような制度はなく、また、すべての駅や車両に警備員を置くことも経費的に難しい。だからこそ、JR東のウエラブルカメラ導入に期待が集まっているのです」(同)

 鉄道係員の安全確保と利用客のプライバシーの両立に向け、運用の取り組みが進んでいる。 

(灯倫太郎)

ライフ