松田聖子「紅白辞退」で思い起こされる“波乱のキャンセル”裏歴史

 歌手の松田聖子が大晦日に放送される「第72回NHK紅白歌合戦」の出場を辞退する。NHKが12月25日、同番組公式サイトで発表した。

 NHKは12月21日、「紅白」出場歌手の曲目を発表した際、松田の曲については「後日改めてお知らせします」として出場可否、曲目とも明らかにしなかった。

 松田の娘で女優の神田沙也加さんが12月18日、35歳の若さで急逝した。スポーツ紙などの報道によると、辞退したのは〝悲しみとショックが大きく、歌える状態にない〟〝他の出演者に迷惑をかけることになってはいけない〟などが理由だという。愛娘を亡くしてから、まだ1週間。松田の心痛を思えば「紅白」を辞退するのも無理はない。

「紅白」はこれまでも数々の〝辞退劇〟が起こっていた。1971年の第22回では、内山田洋とクール・ファイブの前川清が直前になって肺の病気のため辞退。この年、前川は歌手の藤圭子と結婚しており、紅白で「史上初の夫婦共演」になるはずだった。そのため藤は、自身の曲に続けてクール・ファイブをバックコーラスに前川が歌うはずだった「港の別れ唄」を歌唱した。

 衝撃が走ったのは86年の第37回。ヤクザの新年会に招かれていたと報じられた北島三郎と山本譲二が本番の2日前に降板。2人の代役として鳥羽一郎と角川博が発表されるも、鳥羽も「自分にも同様の付き合いがあった」として出演を辞退。ハワイに滞在中だったシブがき隊が急遽帰国し、〝代役の代役〟を務めた。

 88年の第39回は、前年に落選した田原俊彦がカムバック。しかし田原は「『紅白』は卒業した」として辞退を表明。辞退理由は前年落選の遺恨とも見られた。代役は事務所後輩の男闘呼組が務めた。91年の第41回ではHOUND DOGが初選出。代表曲の「ff(フォルティシモ)」を歌うことが発表されたが、HOUND DOGは最新曲への変更を主張し、NHKと衝突。結局、辞退することになり、代役にはバブルガム・ブラザーズが起用された。

「そのほか、井上陽水は『恥ずかしいから』とオファーを受けたことがなく、B’zは『年末は完全オフ』という理由で出場していません」(芸能記者)

「紅白」を辞退する理由はさまざまだが、リハーサルも一因になっているのではないかと、芸能記者が続ける。

「長時間に渡る生放送の『紅白』は失敗が許されないだけに入念なリハーサルが行われます。リハーサルは3日程度行われ、出場歌手が多いぶん、拘束時間も短くありません。そのうえギャラも安いとくれば、多忙なアーティストほど辞退したくなるのも無理はありません。かつては『紅白』に出れば営業で1年間は安心という時代もありましたが、出場のステイタスが昔より薄れたいま、根本的な改革が必要かもしれません」

 いろいろ批判される「紅白」だが、来年は元気に歌う松田を観たいものだ。

(石田英明)

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