JAFが実験!EV車「大雪立ち往生」で命を守る方法とは?

 いよいよ本格的な冬の到来、大雪による高速道路などでの立ち往生が懸念されるシーズンがやってきた。昨年12月には関越道で1000台が立ち往生し、52時間もの間、多くのドライバーが高速道路上の車内で過ごすことを余儀なくされている。

「経産省は、2030年代半ばまでに国内の新車販売を全てHV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)など『次世代自動車』に切り替える目標を掲げていますが、現在発売されるEVの航続距離は長くても400km程度。EVはエンジンがないから電気をつくれないため、渋滞時にはいかにバッテリー消費を抑えるかが課題となります。大雪による立ち往生などが発生して“電欠”になれば、ガソリン車以上に命の危険にさらされるリスクは高くなるでしょう」(自動車ジャーナリスト) 

 そんな中、JAF(日本自動車連盟)が21日、EVの効果的な防寒対策の調査結果を発表し、話題になっている。

 実験では大雪でEVが立ち往生した場面を再現し、テスト車として4台のEVを用意。外気温マイナス8.1℃の環境で、A:オートエアコン25℃常時稼働 B:電気毛布(電源ソケット使用)のみ C:シートヒーターをHi、足元に電気フットヒーター(電源ソケット使用) D:毛布、寒く感じたときにエアコンオン、寒くなくなったらエアコンオフ…という4通りの暖房使用条件において電力消費の違いを調査した。

 車両の運転席には1人が乗り、19時から0時まで滞在。すると、常時稼働のテスト車Aが最も過ごしやすく、テストB〜Dでは5時間ほどで窓ガラスが凍りつき、肌が出ている部分や手足の先にかなりの寒さを感じたという。

 JAFは継続して深夜2時から朝8時までの間で電力消費状況を検証。終了時の電力にもっとも余裕があったのはテスト車BとCで、電力は50%ほど残っていた。テストDはオートエアコンに切り替えたため25%まで低下したが、航続可能距離にはまだゆとりがあった。室内でもっとも快適に過ごせたテスト車Aは、2時間半を経過したところでバッテリー残量が10%を切り、テストは途中終了となった。これにより、オートエアコンを使い続けると大幅に電力が消費され、動かせない危険性が出てくるという結論が導き出された。
 
「EVは走行と暖房の両方に電力を使うため、立ち往生時は航続距離を意識しながら暖房を使うことになります。通常、EVの暖房を稼働させるためには1kWh程度の電力が消費され、単純計算して10時間で10kWh。つまり、50kWhあるEVならさほど心配することはないと思われがちです。ただし、大雪での立ち往生はフル充電の状況でやってくるとは限らない。しかも、電池容量が大きい車ならまだしも、街乗りユースのスモールカーが冬の高速道路などで立ち往生した場合、電欠によって危険な状況になることも想定されます。なので、天候によっては街乗りEVでの外出は控えることも選択肢の一つになります」(同)

 さらに、エアコンのオンオフについても、EVで一度ヒーターを切ると、次にオンにした際は立ち上げに大量の電力を消費するため、注意が必要。それより、車中に電気毛布など電力消費量の少ない暖房用具を常備し、それを有効に使うことがベターだという。

「EVの本格的な普及が始まる2030年代になれば、電池技術も進みコストも低くなり、60kWh以上の電池を搭載する車が主流になるはずです。それまでは、冬の走行には必ず暖房器具を備え、EVを過信しないこと。それが命を守る最善策でしょう」(同)

 大雪での立ち往生を「快適」に過ごせるようになるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

(灯倫太郎)

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