中国人女子テニスのトッププレーヤー・彭帥選手が11月2日に、中国共産党幹部から性的暴行を受けていたと暴露してから行方不明となっている問題。かねてより中国は人権問題が問われていただけに、来年2月に北京五輪の開催を控えているこの時期の告発は痛かったはずだ。
アメリカのジョー・バイデン大統領は11月18日、ここぞとばかりに選手団は派遣するが政府関係者は派遣しないという「外交的ボイコット」を持ち出すと、他の西洋諸国もアメリカの方針に追随。スポーツの問題が政治問題と結びついて、完全に地政学的な問題となった。
米中対立はずいぶんと前から深まっていたのだから、何かあれば互いにけん制をし始める。時には互いの報道官が相手方をけなし合う場面もあって、これは目に付きやすいが、一方、アメリカは有事が懸念される台湾で、駐留米軍をちゃっかりと倍増させていた。これはなかなか目に付きにくい。
「アメリカの外交専門誌がこの度報じたところによれば、9月段階で台湾駐留米軍の数が対前年比で倍増していたといいます。内訳は、海兵隊29人、空軍5人、海軍3人、陸軍2人の計39人で、昨年の9月は18人だったので、2倍超になっています。オバマ政権とトランプ政権初期は10人だったので、その頃と比べると4倍。明らかにバイデン政権になって数を増やしています」(全国紙記者)
全体数は少ないが、逆にそれだけ急激な人数増に意味があるとも考えられる。専門家筋によれば、来年の北京五輪後が一番、台湾を懸念する時期との見立ても出ている。
とはいえ、互いに軍事衝突は避けたいところ。11月15日(米国時間)にオンラインで行われた米中首脳会談では、バイデン大統領が「一つの中国政策は維持」としつつも「現状変更には反対」と、要は「台湾に手出ししたらドンパチもあるよ」との原則論を語って、その原則論は確認しつつも、両者の腹の中では火花がバチバチと飛んだ。
「21日には中国が、台湾海峡を管轄する中国人民解放軍の東部戦区で、老朽化した戦闘機を退役させて新たな戦闘機を配備しました。これは明らかに18日に台湾が最新型戦闘機を配備して、蔡英文・総統がコックピットに座るというパフォーマンスを行ったことに対する対抗の意思の表明です」(前出・記者)
と、アメリカ、中国、台湾の当事者がやっていることはまさに開戦前夜のよう。いずれにせよ、誰も先が読めない状況だけは続くようだ。
(猫間滋)