東京パラリンピックが始まったのに、コロナ戦況はますます悪化する一途だ。首都圏では昼夜問わずに救急車のサイレンが鳴り響き、全国で7万人以上の感染者が容体の急変に怯えながら自宅療養を迫られている。命を守るために何をすべきか。デルタ株と戦う医師が超実用的なノウハウを伝授する。
爆発的な感染力を持つデルタ株により、もはや列島には赤信号が灯っている。
東京・大田区で在宅診療を行っている「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長が、切迫したコロナ医療の現状を説明する。
「これまでコロナ患者は月に1人診断する程度でした。しかも、診断後は病院に入院できることが多かった。ところが、8月の第1週の週末くらいから電話や往診の問い合わせがドンと急増している状況です」
第5波で津波のように押し寄せる陽性者。現在は、症状の重い中等症の患者に集中した医療体制を組んでいるという。
名古屋市などで訪問治療を行う「ちくさ病院」近藤千種医師も、のっぴきならない窮状を訴える。
「当院にPCR検査に来る方の半分以上が陽性になっている状況で、デルタ株の感染力の強さを実感しています。愛知県では入院レベルを引き上げ、簡単には入院できない状況になり、自宅やホテル療養の方が増えています。また、自宅療養中に容体が急変する方も増えてきています」
政府は無為無策、病院は制御不能、と嘆いてばかりはいられない。今や誰しもコロナ陽性の診断を受ける可能性があるだけに、自宅療養シミュレーションが不可欠なのだ。
その自宅療養の前にQ1「発熱したらどうする?」
「まずはかかりつけ医に電話することです。感染対策のため時間を分けて診察を行っているところもありますが、いきなり医局に行くと現場は混乱してしまうので、必ず事前に電話で相談の上、受診していただきたい。かかりつけ医がない場合には、各自治体の『受診相談センター』で相談してください」(近藤医師)
検査の結果、陽性判定が出ても、軽症の場合は自宅療養となる。Q2「自宅療養の必需品は?」
「軽症でも感染を広める可能性があるので、他人との接触を極力避ける必要があります。最大10日間、特に発症の3日前から発症後5日目までが感染力が強いと言われている。外出することができないため、食事はある程度、備蓄しておくことが大事です」(近藤医師)
自治体によって配食サービスを行っている地域もあるが、現状では遅配する可能性が高いことも留意しておきたい。
Q3「命拾いするための食事は?」
「熱が出ること以外に嘔吐、下痢などの症状が出る人もいます。高熱に加え、消化器系の症状がある場合、食事を調理する気力がなくなるので、レンジでチンするだけの食事、缶詰、シリアル、ゼリー飲料など、手軽に摂取できるものを備蓄すべき」(近藤医師)
Q4「療養中は何をして過ごす?」
「ずっと室内で過ごさなければならないため、精神的にも辛くなる。ですから室内で行えるヨガやストレッチなど、適度な運動を行っても大丈夫です。これだけ長い時間、家にいる機会は滅多にないので、映画を見る、読書するなど普段できなかったことをするのも気分転換になると思います。心配してスマホなどで調べすぎると逆に不安になってしまうことも。何が信頼できる情報なのかを見極めることも大切です」(近藤医師)
病は気から。ネット情報に右往左往しないことが重要なのだ。
*(2)につづく