小此木氏出馬で「賛成派」が漁夫の利!? 横浜市長選「カジノを巡る」暑い夏

 8月8日告示、22日投開票の横浜市長選挙では、カジノ誘致の是非が最大の争点だが、ここへきて横浜が地盤の小此木八郎・国家公安委員長、内閣府特命担当大臣(防災)が大臣職の“責任放棄”をしてまで「カジノ反対」で出馬を表明。正直言ってなんだかわけの分からないことになっている。

「1つは小此木氏は国家公安委員長とカジノ管理委員長としてIR(カジノ)をどう設置するかをまとめる立場にあり、かつ、このほど辞任するまで自民党神奈川県連会長だった。本来は特に野党勢力からの反対論の強いカジノをどうにか体を交わしつつ推進すべきところを、出馬表明に当たっては『横浜の誘致を取りやめる』と明言したわけですからね」(地方行政に詳しいジャーナリスト)

 もちろん思い浮かべるのは、山下埠頭の港湾労働を取り仕切っては神奈川県の政治的影響力の大きさから“ハマのドン”とも称されて、カジノに強く反対している藤木企業の藤木幸夫会長へのすり寄りだが、となればカジノ推進の菅首相を裏切ることになる。ただ、「菅首相・藤木会長・小此木氏」の3角関係はそんな単純なものではないだけに、何らかの深謀遠慮がそこにはあると考えた方が自然で、もうそうなると全くのブラックボックスなので外部の者にとってはやはり何だか分からない。

 また、小此木氏がカジノ反対で出馬表明をしたことで、反対派だけが乱立。選挙戦の行方も分からなくなっている。

「今のところ出馬を表明しているのは、太田正孝氏(現・横浜市議)、藤村晃子氏(動物保護団体代表)、福田峰之氏(元・衆院議員)、山中竹春氏(現・横浜市立大学教授)と小此木氏の5名で、基本的には全員カジノには反対です。一方、林文子・現市長の下では商工会がカジノ誘致で既にそろばんを弾いてしまっています。19年に設立されたIR推進協議会には1万5000社を超える企業が加盟しています。この票は今のところどこにも行きようがなくなっていますからね」(前出・ジャーナリスト)

 これだけ反対派が入り乱れたら当然票は分散し、むしろカジノ反対派にとっては不利。事実、小此木氏の出馬に地元の自民党横浜市連では支援がまとまっていないと伝えられている。そこへ、そこそこ名前があって地元財界も納得の推進者候補が立てば、賛成票はそちらに一気に流れて頭1つも2つも抜け出るだろう。今のところ福田氏が唯一「財源確保の1つの方法論」としてカジノ誘致に可能性を残している。あるいは元・横浜DeNAベイスターズ社長の池田純氏の擁立も囁かれていて、横浜政界と地元経済界の間では様々な思惑が入り乱れていることだろう。

 今年の横浜はとりわけて暑い夏になりそうだ。

(猫間滋)

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