新型コロナウイルスの完全終息はいまだ見えない。4都府県に3度目の緊急事態宣言が出され、東京五輪の最終結論もまだ。昨年来、ステイホームが推奨されていることで、コロナ倒産や失職者が増えた。しかしその一方で、増収したお笑い芸人がいる。その代表がオリエンタルラジオの中田敦彦だ。
4月に家族4人でシンガポールへ移住。一男一女を育てる中田パパはトップYouTuberで、登録者数は驚異の379万人超えだ。2019年の春、ホワイトボードと撮影用機材を家に持ち込み、教育系YouTuberとして授業を開始。これがバズり、番組では経済、文学、歴史、哲学、数学、アニメ、エンタメなど多岐にわたる題材を独自の視点で解説。慶應出身のプレゼンスキルは圧巻のひと言に尽き、爆発的な視聴回数を稼いだ。吉本興業を退社したが、稼ぎは安泰のようだ。
自粛生活を一獲千金につなげたのは、オジンオズボーンの篠宮暁もしかり。「鬱憤」の「鬱」の書き方を独特のイントネーションに乗せてツイッターに上げると、375万回を超える再生回数を叩きだした。情報番組で取り上げられ、密着取材も増えた。昨年2月、「秒で暗記!漢字ドリル」を出版すると、緊急事態宣言下の自宅授業とマッチ。Amazonの「学生の勉強法ジャンル」部門でトップとなり、シリーズ3冊の累計発行部数は7万部を超えた。
リモート会議や授業が増えたことで、パソコンやスマホを利用する機会も増えた。それにともない忙しくなったのは、かじがや卓哉。「iPhone芸人」や「家事芸人」の肩書きで、元来幅広い番組からオファーされていたが、拍車がかかった。
「家電製品総合アドバイザーの資格を持っており、家電店で実務経験もあるため、操作方法や新商品の知識は完ぺき。巣ごもり需要の波に乗り、iPhone関連書籍もバカ売れ。これまでに7冊も出版しており、『スゴいiPhone』シリーズの売り上げは18年と19年で国内トップでした」(エンタメ誌編集者)
宅食の増加にともなう廃棄物処理への関心で多忙になったのは、芸人であり清掃員でもあるマシンガンズの滝沢秀一。妻子のために12年にゴミ収集会社に就職した滝沢は、清掃員と芸人の2足のわらじをはく。19年に「ゴミ清掃員の日常」を出版すると、シリーズ累計10万部を突破。コメンテーターなどの仕事が、コロナでさらに増えた。
緊急事態宣言で多くの芸人は上がれる舞台を失い、営業が減り、外ロケができなくなった。そんななか、専門分野で利益を得た希少な芸人たち。サイドビジネスが身を救った格好だ。
(北村ともこ)