11月25日、日経平均は一時500円の上げ幅を見せて2万7000円を突破する場面もあり、最終的には2万6296円で引けたものの、相変わらずバブル以来29年ぶりの最高値を更新しつつある。アメリカも事情は同じで、2017年1月にトランプが大統領に就任直後に記録したダウ平均2万ドルを超えたどころか、史上初の3万ドル超えと、もはやバブルの様相さえ呈している。
「理由はなんと言っても、ファイザーに始まりモデルナ、アストラゼネカとコロナ・ワクチンの臨床試験での好結果が相次いで、実用化近しとの報が続々と寄せられていること。そしてトランプの訴訟合戦での大統領居直りが困難になってきたことで、アメリカの政治リスクが取り払われつつあることでしょう」(アナリスト)
日本の場合、コロナの本格的な第3波到来でGoTo政策見直しという下ブレリスクはあるものの、それもワクチンが実用化されればすぐに吹き飛ぶ話。ダウ平均3万ドルの突破を受けて急遽トランプは会見を開いて「自らの実績」と胸を張ったが、記者の質問を避けるようにしてわずか1分で会見を切り上げて引っ込んだように、彼が大統領の座からすんなり退けばさらに政治リスクが取り払われて一層株価は安定することだろう。
と、朗報が相次いでいることが日米同時株高の理由だが、その背景には各国中央銀行が採用する最新の経済理論の流行がある。「現代貨幣理論(MMT)」という考え方だ。
「MMTとは『Modern Monetary Theory』の略で、中央銀行が財政ファイナンスを容認する理論です。つまり、政府が発行する国債を中央銀行が買い取りしても問題はないという理論です。13年から黒田東彦・日銀総裁が大胆な量的緩和に動いた、いわゆる黒田バズーカはこの考え方に沿ったものと言えます」(経済ジャーナリスト)
すると「異次元の金融緩和」と呼ばれる量的・質的金融緩和では、日銀が民間銀行から債権を買い取ることで大量の貨幣が市場に流れ込むため、市場の投機性は増す。だから株高になるが、その過剰流動性ゆえインフレにつながる危険性が指摘される。だが、そういった金融政策の是非とは別に、コロナへの対応で国や中央銀行は大規模な財政出動と資金提供を行っているのが現実だ。
だから単なるコロナ・バブルの一言で片づけられる相場ではないというのが現実ではあるが、実際に現実経済は痛んでいるのに株高とは、何とも納得しづらいのが本音だろう。
(猫間滋)