愛知・稲沢市の交差点で9月25日の朝、保育園の通園バスと乗用車が出合い頭に衝突する事故があった。この事故で園児18人が病院に運ばれ、4人が軽傷を負ったことが確認された。現場は信号のない交差点で、乗用車側に一時停止の表示があったという。
「園児バスの事故率は低いとされていますが、それでも今年に入ってから千葉や茨城、新潟などで相次いで事故が発生。いずれも複数の園児が軽傷を負っています。そのたびに話題となるのが、園児バスではシートベルトが義務化されていないこと。園児バスの事故では衝突時に前のシートに頭などを打ちつけて怪我をするケースが多いことから、シートベルトの義務化を声高に主張する人も少なくありません」(子育て中のライター)
それではなぜ、園児バスではシートベルトの装着義務が免除されているのだろうか。
「ひとつには園児は体格の差が大きく、適切な位置にシートベルトを装着できないから。3点式だと小さな子ではベルトがノドに掛かりかねませんし、2点式でも強めに締めると痛がってしまう子が多いのです。それよりも問題なのは、多くの園児は自分でシートベルトの付け外しができないということ。そのため保育士らの負担が大きくなるほか、事故が発生した際に自分では脱出できず、最悪の場合は車両火災から逃げ出せないという事態もあり得ます」(前出・ライター)
それに加えて幼児の場合、装着時にシートベルトが上手く引き出せなかったりすると、自分の分だけ壊れていると思いこみがち。すると「ボク、死んじゃうの!?」とパニックになることもあり、その精神的なケアも無視できないという。
「それでも座席からの転落によるケガなどを考慮して、幼児のシートベルト義務化を唱える人もいます。しかし幼児をシートベルトで座席に固定させたら、日本中で『ベルトが外せない!』『壊れた、死んじゃう!』とパニックに陥る園児が続出することは容易に想像できますよ。『自家用車ではチャイルドシートに乗せているじゃないか』との反論もありますが、そばにいる保護者に不快さを訴えればすぐに対応してもらえる状況と、園児バスを同列に論じるのは無理が過ぎるというものです」(前出・ライター)
この問題でなにより重視すべきは、命を守ることだという。前出の子育てライターがこう強調する。
「園児バスの事故で乗車中の園児が亡くなったケースはほとんど聞いたことがありません。そもそも園児バスでは無謀な運転を避けますから、高速で衝突して車外に投げ出されるといった事故は有り得ないでしょう。それに対してもらい事故に伴う車両火災だったり、もしくは水害に遭遇してバスが水没したりするような場合、園児が自分でシートベルトを外せない状況を想像したら身の毛がよだちます。とにかく保護者がいない状況で園児をシートベルトで固定することは、決して安全ではないということを強く訴えていきたいものです」
ともあれ子供たちが交通事故に遭わないことを祈るばかりだ。
(北野大知)