看板キャラはキティじゃない!? 人気1位シナモロールに見るサンリオの18年戦略

 6月9日、2020年の「サンリオキャラクター大賞」の結果が発表され、見事「シナモロール」が優勝に輝いた。「サンリオキャラクター大賞」は、1986年から毎年行われており、投票でキャラクターの人気ランキングが決まるという年に1度の一大イベントだ。WEB上で簡単に投票できるため、サンリオ離れした大人たちでも、子供の頃好きだったキャラクターなどに気軽に投票する事ができる。その注目度は高く、中間発表の際には関連するワードがTwitterで何件もトレンド入りするなど大人も子供も自分の“推しキャラ”の成績が気になるようだ。

 シナモロールは近年サンリオの顔となりつつある。デビュー15周年目である2017年にはじめて1位を獲得し、今回は2年ぶり3回目の優勝を果たした。シナモロールは空を飛ぶ事のできる子犬の男の子で、2002年にはじめてグッズが発売された。誕生直後から、サンリオはシナモロールのプロモーション活動を積極的に展開し、当時、幼児〜高校生の間で圧倒的な人気を誇った。

 昨年の「キャラクター大賞」では、デビュー45周年のアニバーサリーイヤーを迎えたハローキティに栄冠を譲ったものの、今年は圧倒的知名度のハローキティを抑えて1位に返り咲いたシナモロール。今年は5位とふるわなかったハローキティをしのぐ人気キャラとなっているようだ。

「シナモロールは見た目の可愛さはもちろんですが、まめに更新されるTwitterがシュールだけど癒されると話題になり2015年に人気が再燃しました。現在Twitterのフォロワーは63万を超えていて、デビュー当時より幅広い層に認知されてファンを増やしています」(経済誌ライター)

 さらにシナモロール人気の要因には時代も関係している。

「シナモロールが世に出た2002年、メインターゲットだった10歳前後の少女たちが18年経った今、子供を持つ親世代になったことで、自分の子供にもシナモロールグッズを買い与え、現代の子供もシナモロールを好きになるというサイクルが生まれています。このサイクルは他のキャラにも当てはまることで、数年前にはポムポムプリンの人気が世代を経て“再沸騰”しました。子供の頃好きだったキャラクターを、親の立場になって子供ともう一度楽しめるというのは、老舗サンリオならではの魅力かもしれませんね」(前出・経済誌ライター)

 今年に入って、サンリオの「業績不振」はたびたびメディアで報じられている。2020年4月〜12月期の決算報告で、営業利益が前年比30%以上の落ち込みがあったと指摘する声もある。今年8月には創業60年を迎えるが、節目のイベントで1位を獲得したシナモロールはサンリオ復活の救世主としてさらなる注目を集めそうだ。

(浜野ふみ)

ビジネス